メイリオ(3)――メイリオ系フォントのアセンダ・ディセンダ(1)(PC版ページへ)
2006年11月27日19:05 パソコン>フォント・スキン
▼ 関連:メイリオ(4)――メイリオ系フォントのアセンダ・ディセンダ(2)
▼ 関連:メイリオ(5)――メイリオ系フォント MeiryoKe_Console
▼ 関連:メイリオ(7)――メイリオのディセンダを変える(改)
▼ 関連:コマンドプロンプトで使用するフォント
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以前「ブラウザでメイリオを使うと、バックグラウンド・カラー付きの語のバランスが悪い(背景色が文字の上下に拡がってしまう)」ということを書きました。さらに、MeiryoKe_Gothic を生成するパッチが置いてある meir* を読むと「Ke_Gothicは ターミナルやテキストエディタ等、CUIな実務には使い物にならん」ので MeiryoKe_Console(meiryoKeConsole.ttf) を作ったと書いてあります。
* meir というサイトは閉鎖されたようです。MeiryoKe_Gothic や MeiryoKe_Console を生成するパッチおよびメイリオの入手については「ブログ内記事で取りあげたソフト・ファイルのDL情報」をご覧下さい。
これはどういうことなのだろう、と思ってバックグラウンド・カラー付で各フォントを表示してみました(Firefox で表示したものです。IEではバックグラウンド部分の上下の幅がもっと大きくなります――「メイリオ(6)――メイリオのディセンダを変える」の追記に上下の空隙について比較した画像があります。
――〔追記〕「Windows7, 8 のシステム・フォントを変更する」という記事の末尾に「メイリオ・MeiryoKe_Gothic系・MS Gothic系の表示比較画像」を載せました。
「欧文書体の基礎知識」(『和文フォント大図鑑』)によると、欧文フォントの場合、文字のおさまっている部分のうち上の限界線をアセンダライン、下の限界線をディセンダラインといい、大文字の上部・下部を区切る線をそれぞれキャップライン・ベースライン、a, e, c などの小文字の頭に接する線をミーンラインというようです(日本語フォントの場合は文字の部分を字面(じづら)と呼ぶ)。また、b, k, l などの小文字のミーンラインより上にある部分をアセンダ、ベースラインより下にある文字の部分をディセンダと呼んでいます(下記のようにアセンダについての Microsoft の定義はこれと異る)。そして、フォントによって異っていますが、欧文フォントの特性上、アセンダ・ディセンダにはそれぞれ空隙部分が設けてあり、この空隙の大きさはアセンダ・ディセンダの大きさによって定められますが、その割合はフォントによって異っているようです。実際、上に載せた表示例でも分かる通り、メイリオの下側の空隙の割合は他のフォントに比べて際だって大きいことに気がつきます。つまりメイリオはディセンダに含まれる空隙の割合が異常に大きい*のですね。そして、MeiryoKe_Gothic系 も MS ゴシック その他のフォントと比較するとディセンダに含まれる空隙の割合がやや大きいことにも気がつきます。「Ke_Gothicは … CUIな実務には使い物にならん」というのはアセンダ・ディセンダに含まれる空隙の割合が MS ゴシック よりも大きいということだったんですね。それで MS ゴシック と同様の高さをもつ MeiryoKe_Console** を作ったということなのでしょう。
〔追記〕フォントの上部・下部の空隙部分(内部レディング Internal Leading)の割合を示す数値:LineSpacingRate を計算して出力してくれる FontInfo.exe(FontInfo.zip) というツールを見つけました。
このツールを使って LineSpacingRate の値を調べてみると、メイリオ, Meiryo UI, MeiryoKe_Gothic, MiryoKe_Console, MS ゴシック についてはそれぞれ 1.50, 1.27, 1.18, 1.00, 1.00 になっています。なお、このツールではベースラインから上の部分をアセント(CellAscent)、下の部分をディセント(CellDescent)と呼んでおり、これらのアセント・ディセントの値は ttfname3.exe で表示されるアセンダ(Ascender)・ディセンダ(Descender)の値と一致しています。つまり Microsoft がアセンダと呼んでいるものは「欧文書体の基礎知識」に載っているアセンダの定義とは異っているわけです。
また、「フォント メトリックを取得する」では、CellAscent+CellDescent の値を「セル高 LineSpacing」、セル高から空隙部分を引いた値を 「em高 EmHeight」と呼んでいます。FontInfo.exe では、(セル高)を(em高)で割って LineSpacingRate の値を求めていますから、この値から 1.00 を引いたものが内部レディング(Internal Leading)の割合を表しています。
つまり、メイリオには em高の 50% (1.50ー1.00=0.50) にあたる内部レディングが含まれており、Meiryo UI には 27% の、MeiryoKe_Gothic には 18% の内部レディングがそれぞれ含まれていること、そしてMS ゴシックや MiryoKe_Console には内部レディングがない (0%) ことが分かります。なお、css で "line-height=130%" のように指定される改行間隔 30% の部分は「外部レディング(External Leading)」と呼ばれているようです――レディング(Leading)という語は活版印刷の組版で使われていた行間隔調節用の鉛(lead)の板から由来している。
というわけで、meiryoKeGothic系のフォント(MeiryoKe_Gothic, MeiryoKe_PGothic, MeiryoKe_UIGothic)は内部レディングのない MS ゴシック系のフォント(MS ゴシック, MS Pゴシック, MS UI Gothic)に比べてセル高 LineSpacing が 18% 大きくなっています。それが理由で MeiryoKe_Gothic に代わるコンソール関係やエディタ用のフォントとして内部レディングのない MeiryoKe_Console が作られたわけです。また、同様の理由で MS Pゴシックで作られた AA(アスキーアート)が多用される2チャンネルなどでは MeiryoKe_PGothic は使えない(横方向の間隔は同じなのでまったく駄目というわけではない)というので2チャンネル専用ブラウザ用のフォントとして meiryo mod 12pt AA が作られています。調べてみるとたしかに内部レディングのないフォントであり、横方向縦方向ともにMS Pゴシックとまったく同じ割合になっています。ただし、フォントの美しさという点では MeiryoKe_PGothic の方が上まわります。私自身は2チャンネル専用ブラウザ上では読みやすさ・美しさを優先して MeiryoKe_PGothic を指定しています。しかし、AA(アスキーアート)用に特化したメイリオ系フォント、あるいは MS Pゴシック互換の ClearTypeフォントとしての meiryo mod 12pt AA の存在価値はあると思います。
メイリオ・MeiryoKe の内部レディング
〔追記〕メイリオや MeiryoKe のアセンダ上部やディセンダ下部にある空隙(内部レディング)がブラウザ上でどのように表示されるかについて「メイリオ(4)――メイリオ系フォントのアセンダ・ディセンダ(2)」ではさらに詳しく調べました。そこに載せたスクリーンショットをご覧になれば、内部レディングの大きいメイリオと他のフォント、あるいは MeiryoKe系とMS ゴシック系との違いがよく分かります。
* メイリオのディセンダ・アセンダを MeiryoKe_Gothic と同じにしたメイリオ改を作る方法:「メイリオ(6)――メイリオのディセンダを変える」(2007/02/28)。〔2007.12.26 追記 より簡潔な手順でメイリオ改を作る方法:「メイリオ(7)――メイリオのディセンダを変える(改)」〕
** メイリオ5.00 から meiryoKeConsole.ttf を生成するパッチ meiryoKeConsole_gen_5.00rev1.zip は「meir」というページからダウンロードできます。このページから meiryoKe_gen_5.00rev1.zip のほか、メイリオ1.00 から MeiryoKe を生成するパッチ meiryoKe_gen_1.00rev2.zip や ttfname3.zip もDLできます。〔2007.12.26 追記 「meir」は閉鎖されました。パッチのDLは「ブログ内記事で取りあげたソフト・ファイルのDL情報」を参照〕
ところで、WindowsXP のシステム・フォントを変更する(1)(2006.11.16) にまいう~さんからいただいたトラックバック元の「明瞭系フォント比較」(2006年11月24日)には等幅フォントとプロポーショナルフォントのことが書かれています。これは上下の空隙ではなくて、画面に表示する際に左右方向の空隙を詰めないか詰めるかの違いとして現われるものですね。メイリオはプロポーショナルでありながら、TBPゴシックと同じように日本語部分の字詰めの割合がすべて同じなので等幅フォントのように見えます。欧文や記号・数字の部分は普通のプロポーショナル(文字によって字詰めの割合を変える)になっています。MS Pゴシックは日本語の仮名の部分がプロポーショナルになっていて、しかもその字詰めの割合が極端に大きいものがあったりして、読むときに非常な違和感を感じます(「くくる」のように「く」が重なる場合など)。下のように並べて表示してみるとメイリオ系それぞれの特徴がよく分かります。
(関連記事)
メイリオ(1)――WindowsXP とメイリオ・フォント
メイリオ(2)――WindowsXP とメイリオ・フォント(補足)
メイリオ(4)――メイリオ系フォントのアセンダ・ディセンダ(2)
メイリオ(5)――メイリオ系フォント MeiryoKe_Console
メイリオ(6)――メイリオのディセンダを変える
メイリオ(7)――メイリオのディセンダを変える(改)
メイリオ(9)――Windows7版 version6.02, Meiryo UI, Meiryo UI, MeiryoKe6.02
メイリオ(10)――Windows8版 version6.12, MeiryoKe6.12
メイリオ(11)――Windows8.1版 version6.20, MeiryoKe6.20
ClearType Tuner(1)(2)
WindowsXP のシステム・フォントを変更する(1)~(5)
Windows7, 8 のシステム・フォントを変更する
ブログ内記事で取りあげたソフト・ファイルのDL情報
(トラックバックを送った記事)
明瞭系フォント比較(まいう~さん)
Windows XPでメイリオ(Meiryo)フォントを使う(dotさん)
XP環境でVistaのメイリオフォントを使う方法(hanzo22さん)
Meiryo(名鏡 恵さん)
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