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物自体(1)――「物自体」は存在しない〔弁・抜〕 [PC版ページへ]
2006/07/03 18:29

 物自体(1)〜(4)をまとめて読む。

「物自体」について、エンゲルスの『自然の弁証法』〔覚書きと断片〕から引用。


III 弁証法 III-b 弁証法的論理学及び認識論。「認識の限界」について

〔25〕 物自体。ヘーゲル『論理学』第二部、一〇頁、以下これに関する一節全部も。「である、を懐疑論は敢て云おうとしなかった。近代の観念論」(すなわちカント及びフィヒテ)「は認識を物自体に関する知識と看做すことを敢てしなかった……。だが同時に懐疑論は物の見かけの多様な諸規定を許した、或はむしろ物の見かけが世界の多様な富の全部をその内容としていた。同様に観念論の現象」(すなわち観念論が現象とよんでいるもの)「はこの多様な諸々の規定性の全範囲を自身の中に含んでいる。……だからおそらくこの内容の基礎にはどんな存在も、どんな物も、或は物自体も、ありはしないだろう。内容自身はあるがままにとどまっている内容がただ存在から見かけの中へ移し入れられているだけのことである。」それ故ここではヘーゲルは現代の自然研究者たちよりもずっと徹底した唯物論者である。(『自然の弁証法 下巻』田辺振太郎訳・岩波文庫)

〔26〕 カントの物自体の高価な自己批判、カントが思考する自我の所でもまた挫折し、そしてその中でも同じく一つの認識不能な物自体をさがし出している。(ヘーゲル、第五巻、二五六頁以下)。(同上)

この岩波文庫版の『自然の弁証法』にはエンゲルスが手稿に記した『エンチュクロペディ』その他の参照文献も一部収録されている。

覚書きと断片〔III-b〕の〔25〕

ヘーゲル『記念版全集』第八巻、二九〇〜二九一頁、エンチュクロペディ、§一二四。

「カント哲学においてあれほどまで有名となった物=自体はここではその発生において現われている。すなわち、他者への反照に対して、並に区別された諸規定一般に対して、そういう諸規定の空疎な基礎として固執されている抽象的な自己への反照として、である。

補説。物=自体が認識不可能である、ということが主張される場合これは、認識ということを或る対象の具体的な規定性においての把握と解さなければならないのに、物=自体は全く抽象的なかつ無規定な物一般以外の何物でもない、という意味で承認され得る。のみならず、物=自体について語る権利があればその同じ権利をもって質=自体、量=自体、更にまたその他のすべてのカテゴリーについても語り得たわけであろうし、そしてそういう言葉のもとにそれらのカテゴリーがその抽象的な直接性のもとに、すなわちその発展と内的規定性とが無視されたものと、解されるであろう。この意味で、他ならぬこの物だけが、その「自体」の中に固定されるというのであれば、これは悟性の気まぐれとみらるべきものである。……すべての物は最初は「自体」である。ただそれはそこに止ったままで終るのではなく、恰(あたか)も植物「自体」である胚(はい)がそれだけで発展するものであるのと同じように、物一般も抽象的な自己の反照としての単なるそれの「自体」を超えて進み、他者への反照として自己を示すまでに歩みつづけるのであって、こうして物は諸特性を具えるわけである。」

要するに「物自体」というのは物からすべての規定・すべての属性を捨象し去った抽象の極みであって、このような抽象が許されるならあらゆる存在の根底に「〜自体」の「存在」が認められるけれども、それらはみなそれ自体としてのみ「存在」しており、いかなる対象をももっていない。つまり人間の認識にとってもその対象となってはいない。それゆえ抽象の極みであるこのような「〜自体」はあらゆる存在にとって現実的な対象として存在しないものであり、あらゆる存在に対して現実的に反照されえないものである。当然のことながら、「〜自体」は人間の認識にとっても現実的な対象として存在しないものである。

というわけで、「物自体は認識できない」というのは「物自体すなわち存在しないものは認識できない」ということである。これは同語反復であり、何も言っていないに等しい。

なお、最後の引用文中の「すべての物は最初は「自体」である」の「最初は」というのは、「他の対象と出会う前は」という意味である。あらゆるものは現実に現れた瞬間に他の存在と出会うことによってその存在を示すのである。

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