〔2004.03.20記〕
▼ 認識についての覚書(1)〜(7)をまとめて読む。
〔注記〕 「ことば・認識についての覚書」からの転載です。転載にあたって多少の体裁変更を行ないました。知見としては古いものもありますが大筋は変わっていないと思います。
8. 概念のまとめ
概念はものごとをカテゴリー(種類)として把握した認識である。ものごとをPであらわすと、Pの概念とは、具体的個物(これ)をaとして「aはPである」「aはPという種類に属する」ととらえたところに成立する認識、すなわちaをPという種類に類別してとらえたときの認識である。カテゴリーは集合であるから集合論的にはa∈P(aはPの要素である,aはPに属する)ととらえた認識がPの概念である。
通常、カテゴリーの認識は概念の認識に先立つ。一般化能力はさまざまな経験の中から似たようなものをひとくくりにする。こうしてカテゴリー認識(外延の認識)が成立するとそのカテゴリーに属する個々の要素(個別表象,個別概念)の中から共通な属性を抽出することによってカテゴリーの内包が成立する。この過程で最初のカテゴリー認識(外延の認識)が修正されることもある。また、この修正は自分以外の誰かの指摘や自己の学習によってなされることもある。このようにしてカテゴリーの外延と内包が統一的に認識されたものが個別概念である。カテゴリーの内包を規定するのは個々の個別概念の一般的・普遍的側面(普遍概念)=共通性であり、外延を形成するのは個々の個別概念の特殊的側面(特殊概念)=差異である。
このように概念は内包と外延を包括した全体(統一体)=個別概念として認識されるから、観念とか想念、思念などとよばれることもある。哲学ではこのように統一された概念(個別概念)の認識の中から内包(一般概念・普遍概念)のみをとりあげてこれを「概念」とよぶこともある。ふつうの辞書では概念の意義としてこの「純粋な」普遍概念つまり内包のことだけを記述してあることが多い。しかし多くののものごとについて、その内包(普遍概念)だけでなくその外延の一部(特殊概念を含んだ個別概念)を併記あるいは列記しているのがふつうである。
人間はものごとをカテゴリーとして認識するばかりでなく、種々のカテゴリーをもカテゴリーとして認識する(集合の相互の包含関係としてとらえる)。この認識過程は分類とよばれるもので、分類はカテゴリー間に上位、下位、等位の区別をつけその包含関係によって諸カテゴリーを階層化し体系化する方向にむかう。人間がものごとを理解する過程は類別と分類の二つの過程である(分かる=別ける、分ける)。また、カテゴリーの体系を認識することは概念の体系を認識することであるから、概念も上位、下位、等位の階層構造をもっている。
概念は個々の人間の脳内に認識として存在するものであるから、諸々の概念は個々の人間によって異なる。しかし同一の社会に属するものどうしはさまざまな精神的な交通を通して概念の共有化を図る。したがって同一社会に属するものはそれぞれの所有する概念を共有しようとし、極端な差異のない似たようなものになることを目指す。しかしながら人間の認識能力・表現能力には限界があり経験にも個人差があるから、当然のことながらみながみな同じ概念を共有できるとは限らない。人間の精神活動(認識)は概念を媒介にしてなされるから、人間同士の精神的交通も概念を媒介にしておこなうしか方法がない。このため意思疎通にもそれなりの限界が存在することになる。さらに文化が異なる社会同士ではカテゴリーの体系も概念の体系も異なる。精神的交通における最大の問題点は概念が認識であるということである。概念は知覚することができないから自己の認識(内容)を他の人間に伝えるためには、なにか知覚可能なものを仲立ち(媒体)にして表現しなければならない。そのため、社会的動物である人間はさまざまな媒体を利用して自己の認識を表現することによって他の人間が認識できるように努力してきた。身振り手振りを使ったり、声を出したり、絵を描いたり、木を揺らしたり、音を立てたり、自然界に存在するあらゆるものを一定のやりかたで並べたり、…といった方法(表現)で意思疎通を図ってきた。やがて記号がつくられ、ことばがつくり出されることになる。芸術もこのようにして生まれた表現の一種である。
◇◇◇ 2004.03.20/2004.05.18訂正・追記 ◇◇◇
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