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2010年08月23日(月)| 社会>政治・経済 |  
『週刊ポスト』新覆面官僚座談会 前編――財務官僚に実権を完全に掌握された菅政権

『週刊ポスト』2010年8月13日号 p.32 

〈空きカン内閣の「奥の院」緊急特集〉

「政治主導」をせせら笑う霞が関の真実を全て明かす

 新 覆面官僚座談会 前編

「みんなの党・渡辺喜美をぶっ潰せ」

 霞が関にとってまさに「わが世の」であろう。「脱官僚」を掲げた民主党の政権奪取から間もなく1年、参院選で菅政権が一敗地にまみれたのを契機に、窮地に追い込まれていた官僚機構が急速に勢力を盛り返している。本誌はこの国の政治がターニングポイントを迎えるごとに、主要官庁の官僚を集めた「覆面官僚座談会」を開催してきた。時代を映す証言は回を重ね、人を替え、9年前からは「新・覆面座談会」と装(よそお)いを新たにした。今回、緊急招集に応じた4人が「霞が関の大反攻」の実態を明かす――。

司会&リポート武富 薫(ジャーナリスト) 

「総理は優秀な政治家だ」

「政治主導」を掲(かか)げた政権交代から1年、この国では「官僚主権」というアンシャン・レジーム(旧体制)が再び、跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)し始めた。

 鳩山内閣は事務次官会議の廃止や各省庁の幹部人事凍結で曲がりなりにも官僚を抑(おさ)え込もうとしたが、じっと嵐が過ぎるのを待っていた霞が関官僚は菅政権で復権を果たし、菅直人・首相が参院選大敗で死に体となると、政治・行政の実権を完全に握った。

 「事業仕分け」「国家戦略室」「次官会議廃止」――鳩山政権がつくった政治主導のスキームが官僚の手によって次々に潰(つぶ)されている。こんなことなら政権交代などするんじゃなかった、と肩を落とし、あるいは肩を震わせて怒る国民の声など彼らには届かない。その中心にいる財務省、経産省、外務省、総務省の課長4人が集まった。

*

「イラ菅」「ズル菅」の異名を取る菅首相が、霞が関で「空きカン」と呼ばれ始めたのは副総理兼財務相の頃からだ。頭はカラッポでも蹴っ飛ばせば大きな音を立てて飛んでいく。だから空きカンなのだそうだ。本誌がこの政権を「空きカン内閣」と呼んできた“語源”である。

「財務省は失礼すぎる」

 経産省B課長が乗ってきた。財務省が標的だとわかっているから気楽な立場だ。

――命名は財務官僚?

財務省A課長「菅総理にレクチャーしたことがある者なら、知識不足はすぐわかる。しかし、細かくメモをとって勉強するから、呑み込みは早いですよ。優秀な政治家だと思う。それに“空きカン”なんて呼び名はわが省のセンスじゃない(と、他の3人に視線を投げる)

 外務省C課長は“こっちに振るな”という表情。

 財務省が政治家を“優秀”という時は、自分たちのレクチャーの通りに理解し、そのまま答弁や演説ができる能力を指している。財務省は菅総理が国家戦略相に就任した直後から、大矢俊雄・主税局参事官と高田英樹・主計局補佐をお目付役として脇を固めていたから、総理の本質を見抜いていたはず。うちの若い連中も財務省の若手から聞いて、空きカンと呼んでいた。僕は注意したけどね」

 総務省D課長がトドメ。

「ただのカラッポ大臣ならいくらでもいる。総理は現実主義者。財務省の振り付け通りに演じることが自分の利益になると計算している。財務省がうまかったのは、その菅総理に消費税10%というとびきり大きな音を立てさせたことだ」

 経産B、外務Cが「そうだ、そうだ」と同調し、財務Aは嫌な顔をした。そのまま座談会は本題に入った。

 勝新次官はOBに“謝罪行脚”

――Aさん、何かいいたそうですね。

財務A 信じてもらえないかも知れないが、総理の10%発言はわれわれがいわせたわけではない。わが省には苦い経験がある。

経産B いきなり弁解?

外務C 細川内閣の国民福祉税構想の失敗のことだよね。94年2月に時の細川護煕(もりひろ)・首相が深夜に記者会見を開き、突然、消費税率を7%に引き上げて福祉目的にすると発表した。

総務D 当時の大蔵事務次官は大物と呼ばれた斎藤次郎さん、今の日本郵政社長だ。斎藤さんは細川内閣の高い支持率があれば国民に税率アップを理解してもらえるという判断で、当時の厚生省次官らと個別に会談し、社会保障の財源にすることで合意を取り付けた。野党だった自民党の税調首脳にまで根回しして、「その手腕は鮮やかだった」とわが省でも語り継がれている。しかし、結果的に大批判を浴びて細川総理はすぐに撤回せざるを得なかった。それが財務省のトラウマになっている。

――今回の菅発言とそっくりのパターンだ。

財務A 同じ過ちを、わが省が繰り返すと思うかい?

 国民福祉税の時、増税には支持率の高さなどではなく、国民の反対論を乗り越える強力な政権基盤が必要だということを学んだ。細川内閣は8党連立で政権基盤が不安定だったし、消費税を5%に引き上げた橋本内閣も参院選に大敗して退陣した。だから今回の参院選で民主党には単独過半数を取ってもらいたかったし、そのためにはマニフェストに「消費税を含む税制抜本改革」の1行を目立たないように盛り込ませるだけで十分だった。

経産B なら、そうさせれば良かったじゃない。

財務A 総理会見で税率の話が出たのはハプニング。会見前日に玄葉光一郎・民主党政調会長が菅総理に、「政治決断の時だ」と迫ったからです。

経産B 玄葉大臣の暴走といいたいわけね(苦笑)。でも財務省はメディアを通じて「国民の半数以上が消費税引き上げ賛成」とさんざん煽(あお)ったうえで、菅総理や玄葉大臣に「政権政党は消費税引き上げを掲げたほうがいい」と刷りこんできた

 とくに玄葉さんは財務省が消費税引き上げの旗頭に仕立てた人物で、民主党内に「国家財政を考える会」を旗揚げし、その論功行賞(ろんこうこうしょう)で菅内閣の政調会長兼公務員担当相に大抜擢(ばってき)された。

外務C 財務省の洗脳が政治家とマスコミに効きすぎてしまったんだな。

 (財務Aは目をそらす)

総務D おかげで財務省の勝栄二郎・新次官は後始末が大変だったらしい。

経産B 斎藤元次官に近い財務省OBからも、「勝はなぜ総理に10%をいわせたのか」と詰問(きつもん)されて冷や汗をかいたそうですよ。

財務A 詰問というほどではないし、OBにも誤解があったようだ。勝さんは次官経験者などに次官就任の挨拶回りをしているが、そこでご説明申し上げている。

経産B 財務省のエース次官の汚点になりかねない。

財務A 心配ご無用。勝さんは得点の方がはるかに多いからね。

総務D 最大の功績は事務次官会議の復活だろう。

 すでに「祝賀会」の準備も

――鳩山内閣は事務次官会議を廃止したが、菅内閣は仙谷由人・官房長官が会議復活に踏み込んだ。国民にはわかりにくいが、この問題は霞が関にとってそれほど重要なのか。 

総務D 政治家やマスコミは事務次官会議で官僚が悪だくみをしているような印象を抱いているが、実際に会議で何をやっているか知らない。このなかで、出たことのある人いる?

外務C まだ雲の上の話なもので(笑い)

総務D 僕は以前、官邸での事務次官会議に説明要員として陪席(ばいせき)したことがある。事務の官房副長官が翌日の閣議案件を順番に説明し、次官たちは仕出し弁当を食べながら暇そうに窓の外を見ている。翌日の閣議では大臣たちがその文書にサインしていくだけ。

経産B なら必要ないかというと、そこが違う。

財務A 次官会議の総意がなければ法案を閣議に提出できないという慣行は、いざという時に政治の暴走を防ぐ抑止力、保険としての機能であって、その場で何かを決めるものではない。例えば亀井(静香・前金融相)さんが出した郵政改革法案は、以前なら各省の反対が強くて次官会議でまず議論が止められたはずだ。

 鳩山内閣で次官会議が廃止されてからは、各省はそういう安全弁を失って不安に陥っていた。次官のやることがない。

経産B 前次官の日程を聞いても、誰それの表敬訪問を受けるとか、さびしい限り。仕事はゼロ。

総務D 鳩山内閣では省内は次官の代わりに政務三役が仕切り、各省にまたがる政策は閣僚委員会で協議することになった。それは一つの考え方だとは思うが、政治家の能力がともなっていなかったことが問題だ。

財務A 事務次官会議復活の意味は、役所の調整機能と政治に対するチェック機能を復活させることにある。勝次官はそのことを菅首相や仙谷官房長官に認めさせた。ただし、何も堂々と官邸で次官会議を開こうというような話じゃないけど。

――菅内閣は鳩山時代に凍結されていた幹部人事を解禁し、参院選後に財務、経産など7人の次官が交代した。新次官の顔ぶれは順送りで政治任用はなかった。

総務D 菅政権は内閣人事局を設置して各省幹部の人事を政治主導で決めるという政治主導確立法案の成立を諦めて、人事権を官僚に返したということだから、順当な人事になるのは当然。ただ、これまでの次官は自民党政権で任命された人たちだが、新次官は民主党政権で任命されたという大きな違いがある。だから新次官たちは張り切っている。

経産B 勝次官は各省の次官と一席持ちたいと呼びかけているらしいじゃない? もう会場も用意してるとか。次官会議復活祝いと言うところかな。

財務A いや民主党代表選前の時期だから、もっと生臭いものになるだろう。このまま菅政権を支えていくのかどうかのすり合わせが行なわれるはずだ。

 菅、仙谷が「財務省への忠誠度」争い

――官僚重視の菅政権には延命してもらいたい?

経産B われわれは国民に見放された政権に忠誠を尽くすほど私利私欲で動いているわけではない。

外務C おや? 経産はアンチ菅ですか(笑い)

経産B そういう話じゃない。行政官としては、内閣が必要な予算や法律を通せるのかを第一に考える。政権基盤が弱いと行政の停滞を生み、国民生活に支障をきたす。新次官たちが、菅首相が続投した場合、必要な法案を通せるのか見極めるために話し合うのは当然の責務だと思う。

総務D 総理が最も心配しているのが、霞が関に梯子(はしご)を外されることだ。代表再選を考えると、総理は消費税増税を撤回した方がプラスかも知れないが、それでも増税の旗を降ろそうとしないのは、消費税引き上げを諦めた瞬間に、財務省にクビを切られるかもしれないと不安だからだろう。

外務C 小沢(一郎・前幹事長)さんより、財務省を怖がっているわけだ。

経産B 菅首相と仙谷官房長官は財務省のご機嫌伺いで競(きそ)い合っているみたいだ。

財務A どうかなァ。確かに仙谷さんは財務省とのパイプさえにぎっていれば、仮に菅総理が退陣しても次の政権の中枢に残れると計算しているフシがある。わが省OBの古川元久・官房副長官も仙谷さんの意向ばかり伝えてくる。

経産B 財務省から官邸に送り込まれた佐々木豊成・官房副長官補、松浦克巳・内閣府参事官も仙谷さんに張り付いているね。彼らが仙谷さんに「官房長官と国家戦略相の2人の調整役は指揮系統が混乱する」と囁いた結果、国家戦略室の縮小が決まった。民主党が政治主導で予算や外交の基本方針を決める司令塔にするといって設置した部署だが、財務省は予算編成権を奪われかねないと潰したがっていた。それを元に戻すと決めてマスコミや国民には批判されたけど、仙谷さんは財務相に恩を売った。

 菅総理には消費税、仙谷官房長官は政治主導撤回と財務省は2人に忠誠心を競わせているんじゃないの?

財務A そんな国家戦略はないよ。ただ、お二方とも優秀な政治家であることは間違いない。

――国家戦略室の縮小の理由は不可解だ。仙谷氏は、政治主導確立法案の成立が難しくなったからと説明したが、自民党は麻生政権時代に同じ趣旨の法案を出した。渡辺喜美・代表のみんなの党も「正しい政治主導確立法案」をまとめている。与野党で法案は合意できるはずだ。

財務A 民主党がみんなの党の公務員制度改革案を丸呑みし、再び政治主導と言い出されると、また混乱を招く。官僚が政治に口を出すことは厳に慎まなければならないが、行政を停滞させないためにも政治の安定は必要なんだ。

 標的は渡辺チルドレンの資金

 渡辺氏の名前が出た途端、4人の表情は急に引き締まった。どうやら霞が関では禁句のようだ。

――渡辺氏は菅内閣が閣議決定した「退職管理基本方針」は天下り容認だから撤廃すべきだと主張して、仙谷官房長官に会談を申し込んだが、拒否された。

総務D 退職官吏基本方針には、幹部を現役のまま独立行政法人や民間企業に出向(しゅっこう)させるという苦肉の策が盛り込まれている。給料は相手企業持ちだから、財政的負担も小さい。天下りが厳しくなっている中で現役出向は今後の人事政策の根幹をなす制度だ。

財務A 財務省でも今回の人事で役10人に民間企業への現職出向の打診があった。禁止したら次の人事ができない。申し入れを拒否したのは賢明な判断だ。

――(ここが勝負!)興味深い2つの資料がある。1つは「総務省作成:官房長官用想定問答集」、もう1つは「玄葉大臣用想定」とあり、答弁作成者として内閣府の国家公務員制度改革推進本部の事務局参事官(総務省出身)の名前がある。内容はほぼ同じで、現役出向は「形を変えた天下りとのご指摘はあたらない」、退職官吏基本方針についても「撤回する考えはない」と、みんなの党の要求を拒むよう指南している。

財務A (資料をめくりながら)総務省の情報管理はどうなっているのかねェ……。

総務D なんでそんなものを司会者が持っているのか知らないが、官房長官用の想定問答を作成したのは、わが省に出向中の財務官僚だ。ウチだけが持っている資料じゃない。

外務C 責任のなすりあいは意味がない。仙谷さんには各省から総理(5人)より多い8人もの官僚が秘書官として脇を固めている。彼らは仙谷さんを渡辺さんに会わせないようにという点で一致して動いている。

総務D 渡辺さんが要求しているのは、再就職先を紹介せずに公務員のクビ切りをやれということ。こんなのは公務員改革ではなく、官僚を叩いて人気取りするだけの悪政だ。仙谷長官はじめ民主党幹部とは、「生首は切らない」という方針で一致している。これ(想定問答)は、仙谷長官や玄葉大臣に正しい理解を深めてもらうためのものだ。

――みんなの党はしょせん小党。なぜそんなに神経質になるのか。

 (しばらく一同沈黙。意を決して財務Aが口を開く)

財務A 彼らのバックには、改革派を名乗る現職官僚たちがいる。役所内で意見の対立があってもいいが、特定の政治家と結びついて政府批判をするのは行政官としての矩(のり)をこえている。それを許したら政治と行政の境界がわからなくなる。

『週刊ポスト』はわかっているはずじゃないのか? 渡辺さんが公務員改革担当相時代の部下だった経産省の古賀茂明・審議官のインタビューを載せたじゃないの。

――古賀氏はインタビュー(7月30日号)で、「消費税を上げるには、公務員を思い切ってリストラし、民間人と一緒にハローワークに並ぶくらいでなければ理解を得られない」と語り、現役出向制度を批判した。

総務D ほらね、みんなの党の主張とピッタリ重なる。われわれが閣僚に知恵をつけて批判されるなら、野党とひそかに通じている彼らはどうなのか。

外務C 古賀さんは年収2000万円の現役出向を拒否したそうじゃないか。経産省は70歳まで面倒を見るので3億円を棒に振った。古賀シンパには、十分な脅(おどか)しになったんじゃないか。

経産B 私は古賀氏を擁護する立場ではないが、わが省の若手に天下りへの不満が強いことも事実。国民は官僚は皆、天下りが大好きだと思っているが、それは誤解だ。外郭団体に天下ったOBがやってきて、「天下ればすることがないと聞いていたが、本当にないんんだよな」というわけ。部下はその団体に予算をつける仕事をしている。おかしいという不満は高まる。

総務D それでみんなの党に情報が行くんだよ。いいたくないが、なんでこの件がばれてるの、と犯人探しをしたこともある。

財務A 内部の協力者だけじゃない。政治主導を唱え続けてきた小沢前幹事長が渡辺さんと手を組むことがあれば非常に手ごわい敵になる。みんなの党はいろんな意味で危険な存在であることは間違いない。

 ただし、江田憲司・幹事長や浅尾慶一郎・政調会長は公務員改革に関しては穏健派。しかも、選挙で苦労しているから、民主党と選挙協力したいのが本音だ。彼らと渡辺代表の考え方の違いは突破口になる。

外務C 政界の分断工作は財務省が得意とするところ。これは、みんなの党も相当厳しいことになりそうだ。

経産B 財務省の同期は、「渡辺はスキャンダルまみれになる」といっていた。今回の参院選で当選した新人議員にはベンチャー経営者などが多い。株取引、国税関係など資金関係を洗っていて、マスコミへも少しずつ流しているようだね。

総務D 渡辺さんが創設から役員に名を連ねていた大学の話も流れている。

外務C 僕も聞いた。厚労省の天下りを受け入れて急成長したというんだろう。

総務D 急成長の陰では政治力が働いたというストーリー。明らかに渡辺さんを標的にしている。代表の求心力が落ちれば、江田、浅尾あたりと内輪もめが起こる可能性は高い。

 増税先行の先に「大蔵省再興」

「渡辺潰し」でスクラムを組んだかに見えた4人。が、総務Dが「ひとつ、いわせてくれ」と切り出した。

総務D いまの財務省を見ていると、参院選に負けた菅政権は消費税引き上げの踏み台くらいにしかならないと考えているように見える。予算編成では政策経費一律10%削減のシーリングを復活させ、財務省が菅内閣に使っていいと与えたのは特別枠の1兆円余り。消費税を上げなければ公約を何も実施できないという状況に追い詰めている。

経産B 政策的経費24兆円を1割カットすれば、末端の事業費は2~3割ダウン。景気にマイナスが大きい。

総務D 菅政権は何でも財務省のいいなりだが、官僚が政権をそこまで追い詰めていいのかという声はある。内閣を潰す覚悟で増税を決めるのは政治家であり、官僚であってはならない。

財務A つけるべき予算はつけている。国交省は自動車道路の未着工区間を着工させる検討を始めているし、外務省は参院選のさなかにカンボジアのメコン川に架(か)ける全長5キロの橋の援助を決めたが、調査段階で総工費65億円だったのが、いつの間にか120億円に跳(は)ね上がっていた。

外務C 僕は何もいってないけどね。そのための消費税だというわけでしょう。ただ、D君のいいたいのは、財務省の好き嫌いで政権を潰していいのかということだよね。

財務A なんのことだ? だから菅さんも仙谷さんも優秀だといったはずだ。

経産B とぼけなくてもいい。大蔵省から金融庁が分離されたのは10年前の金融国会。この時、自民党に「金融・財政分離」を強く主張したのが民主党の菅氏、仙谷氏、枝野幸男氏らの現政権中枢だった。参院で少数だった小渕内閣はその要求を受け入れ、大蔵省の解体へと向かったが、その恨みを忘れていないはずだ。

財務A 金融行政を一体化した大蔵省でなければ、経済政策の整合性をとることが難しいのではないかという議論はある。政府が財政再建を求められる中で景気を腰折れさせないためには、民間金融機関の協力が欠かせないが、現在の金融庁は必ずしもそういう大局的な見方はしないわけです。

 ただし、菅政権への意趣返しというのは邪推だよ。総理が国家戦略相時代の高田英樹・秘書官は英国財務省に派遣され、組織や人事管理を学んできた専門家。英国の財務省は金融・予算・経済政策のすべてを担当するまさに「大・大蔵省」だ。菅首相は財務大臣時代に彼を高く評価して省内に財務省改革プロジェクトチームをつくらせた。かつては財金分離論者だった菅首相も、今や大蔵省の再建に理解を示している。

経産B なんだ! もう「大蔵省復活」まで認めさせていたのか。A君のところは抜け目がなさすぎる(苦笑)。財務省は斎藤元次官の社長就任によって日本郵政という巨大金融機関を握った。その上に金融庁、内閣府の旧経済企画庁を合わせた「大・大蔵省」を勝次官体制の2年間で実現しようというわけ?

総務D そもそも小泉政権の郵政民営化だって財務省の振り付けだったんでしょ。だけどあまり策を弄すると失敗するのも繰り返されてきた歴史だ。

外務C だいたい斎藤さんは大蔵省復活に賛成なの? 今の財務省より小沢一郎さんのほうが、あの人とは親しいんじゃないか。

財務A それは否定しない。小沢さんがどう出てくるかは最大の変動要因だ。C君にとってもね。

*

 一同の表情が、さらに厳しくなった。次号の「後編」では、その小沢氏が座談会の主人公になる。

(以下次号) 

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言語関連の用語について

 表現された言語(本来の意味の言語)を単に言葉あるいは言語、ことば…のように表記しています。ソシュール的な意味の言語(言語規範ないし思考言語)はカッコつきで「言語」あるいは「言語langue」・「ラング」・「ことば」等と表記しています。(背景色つきで「言語」のように表記している場合もあります)

 一般的な意味の概念を単に概念と表記し、ソシュール的な意味の概念(語の意義としての概念、いわゆるシニフィエ・語概念)はカッコつきで「概念」と表記します。(2006年9月9日以降)

 また、ある時期からは存在形態の違いに応じて現実形態表象形態概念形態のように用語の背景色を変えて区別しています(この文章では〈知覚形態〉も〈表象形態〉に含めています)。

 ソシュールの規定した用語を再規定し、次のような日本語に置き換えて表記します。詳細は「ソシュール用語の再規定(1)」を参照。

【規範レベルにおける再規定】

・シニフィアン  → 語韻     (ある語音から抽出された音韻)

・シニフィエ   → 語概念(語義) (ある語によって表わされるべき概念)

・シーニュ・記号 → 語規範(語観念)(ある語についての規範認識)

・記号の体系   → 語彙規範   (語すべてについての規範認識)

・言語      → 言語規範   (言語表現に関するすべての規範認識)

語概念・語韻は 語概念⇔語韻語韻⇔語概念)という連合した形で語規範として認識されています。語規範はこのように2つの概念的認識が連合した規範認識です。ソシュールは「言語langue」を「諸記号」相互の規定関係と考えてこれを「記号の体系」あるいは「連合関係」と呼びますが、「記号の体系・連合関係」の実体は語彙規範であり、言語規範を構成している一つの規範認識です。規範認識は概念化された認識つまり〈概念形態〉の認識なのです。

なお、構造言語学・構造主義では「連合関係」は「範列関係(範例関係)」(「パラディグム」)といいかえられその意義も拡張されています。

 語・内語・言語・内言(内言語・思考言語) について、語規範および言語規範に媒介される連合を、三浦つとむの主張する関係意味論の立場からつぎのように規定・定義しています。詳細は『「内語」「内言・思考言語」の再規定』を参照。(2006年10月23日以降)

  : 語規範に媒介された 語音個別概念 という連合を背後にもった表現。

内語 : 語規範に媒介された 語音像⇔個別概念 という連合を背後にもった認識。

言語 : 言語規範に媒介された 言語音(語音の連鎖)⇔個別概念の相互連関 という連合を背後にもった表現。

内言 : 言語規範に媒介された 言語音像(語音像の連鎖)⇔個別概念の相互連関 という連合を背後にもった認識・思考過程。

内語内言は〈表象形態〉の認識です。

なお、上のように規定した 内言(内言語・内的言語・思考言語)、 内語とソシュール派のいうそれらとを区別するために、ソシュール派のそれらは「内言」(「内言語」・「内的言語」・「思考言語」)、「内語」のようにカッコつきで表記します。

また、ソシュールは「内言」つまり表現を前提としない思考過程における内言および内言が行われる領域をも「言語langue」と呼んでいるので、これも必要に応じてカッコつきで「内言」・「内言語」・「内的言語」・「思考言語」のように表記します(これらはすべて内言と規定されます)。さらに、ソシュールは「内語の連鎖」(「分節」された「内言」)を「言連鎖」あるいは「連辞」と呼んでいますが、まぎらわしいので「連辞」に統一します(「連辞」も内言です)。この観点から見た「言語langue」は「連辞関係」と呼ばれます。ソシュールは「内語」あるいは「言語単位」の意味はこの「連辞関係」によって生まれると考え、その意味を「価値」と呼びます。構造言語学では「言(話し言葉)」や「書(書き言葉)」における語の連鎖をも「連辞」と呼び、「連辞関係」を「シンタグム」と呼んでいます。詳細は「ソシュールの「言語」(1)~(4)」「ソシュール用語の再規定(1)~(4)」「ソシュール「言語学」とは何か(1)~(8)」を参照。

 さらに、ソシュールは内言における 語音像⇔個別概念 という形態の連合も「シーニュ・記号」と呼んでいるので、このレベルでの「シニフィアン」・「シニフィエ」についてもきちんと再規定する必要があります。

【内言レベルにおける再規定】

・シニフィアン  → 語音像(個別概念と語規範に媒介されて形成される語音の表象)

・シニフィエ   → 個別概念(知覚や再現表象から形成され、語規範の媒介によって語音像と連合した個別概念)

・シーニュ・記号 → 内語

・言語      → 内言

ソシュールがともに「シーニュ・記号」と呼んでいる2種類の連合 語韻⇔語概念語規範)と 語音像⇔個別概念内語)とは形態が異なっていますのできちんと区別して扱う必要があります。

 また、実際に表現された言語レベルにおいても、語音個別概念 という形態の連合が「シーニュ・記号」と呼ばれることもありますので、このレベルでの「シニフィアン」・「シニフィエ」についてもきちんと再規定する必要があります。

【言語(形象)レベルにおける再規定】

・シニフィアン  → 語音個別概念語規範に媒介されて実際に表現された語の音声。文字言語では文字の形象

・シニフィエ   → 表現された語の意味。個別概念を介して間接的にと結びついている(この個別概念語規範の媒介によってと連合している)

・シーニュ・記号 → (表現されたもの)

・言語      → 言語(表現されたもの)

 語音言語音語音像言語音像語韻についての詳細は「言語音・言語音像・音韻についての覚書」を、内言内語については「ソシュール用語の再規定(4)――思考・内言」を参照して下さい。また、書き言葉や点字・手話についても言語規範が存在し、それらについても各レベルにおける考察が必要ですが、ここでは触れることができません。

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プロフィール

シカゴ・ブルース

シカゴ・ブルース (ID:okrchicagob)

1948年10月生れ(74歳♂)。国語と理科が好き。ことばの持つ意味と自然界で起きるできごとの不思議さについて子供のころからずっと関心を抱いていました。20代半ばに三浦つとむの書に出会って以来言語過程説の立場からことばについて考え続けています。長い間続けた自営(学習塾)の仕事を辞めた後は興味のあることに関して何でも好き勝手にあれこれ考える日々を過ごしています。千葉県西部在住。

2021年の2月下旬から海外通販(日系法人)を通じてイベルメクチンのジェネリック(イベルメクトール:インド Sun Pharma 社製)を購入し、定期的に服用しています。コロナワクチンは接種していません。

ツイッターは okrchicagob(メインアカウント)、または Chicagob Okr(サブアカウント)。

コメント等では略称の シカゴ を使うこともあります。

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意識と言語(こころとことば)

われわれは人間が『意識』をももっていることをみいだす。しかし『精神』は物質に『つかれて』いるという呪いをもともとおわされており、このばあいに物質は言語の形であらわれる。言語は意識とおなじようにふるい――言語は実践的な意識、他の人間にとっても存在し、したがってまた私自身にとってもはじめて存在する現実的な意識である。そして言語は意識とおなじように他の人間との交通の欲望、その必要からはじめて発生する。したがって意識ははじめからすでにひとつの社会的な産物であり、そして一般に人間が存在するかぎりそうであるほかはない。(マルクス・エンゲルス『ドイツ・イデオロギー』古在由重訳・岩波文庫)


ことばは、人間が心で思っていることをほかの人間に伝えるために使われています。ですから人間の心のありかたについて理解するならばことばのこともわかってきますし、またことばのありかたを理解するときにその場合の人間の心のこまかい動きもわかってきます。
このように、人間の心についての研究とことばについての研究とは密接な関係を持っていて、二つの研究はたがいに助け合いながらすすんでいくことになります。一方なしに他方だけが発展できるわけではありません。
…こうして考えていくと、これまでは神秘的にさえ思われたことばのありかたもまったく合理的だということがおわかりになるでしょう。(三浦つとむ『こころとことば』季節社他)


参考 『認識と言語の理論 第一部』 1章(1) 認識論と言語学との関係

子どもたちに向けた言葉

ふしぎだと思うこと
  これが科学の芽です
よく観察してたしかめ
そして考えること
  これが科学の茎です
そうして最後になぞがとける
  これが科学の花です
        朝永振一郎

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