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2011年07月07日(木)| 科学>発酵 |  
乳酸菌を培養する(4)――〔応用編3〕通販の米ぬかを使った米ぬか培養液

米とぎ汁を使った乳酸菌の培養を始めてからほぼ2か月。その頃に比べると気温もずいぶん高くなったので、ときどき攪拌するくらいの手間しかかからず培養に失敗するようなことはほとんどなくなりました。しかし、私は2日に1合の米しか炊かないため、沢山の乳酸菌液を作るには米とぎ汁だけではまったく足りません。そんなわけで当初の実験的試みが終わった段階で、培養液をとぎ汁から米ぬか使用のものに切り替えました。そのおかげでかなり沢山の乳酸菌液を手に入れることができるようになりました。

とはいえ、2リットルのボトルを1日に1本くらいなら自家精米でできた米ぬかでもなんとか間に合いますが、2本、3本…と増やすにはこれではまったく足りません。苦肉の策として通販で扱っている米ぬかを購入してやってみることにしました。

〔注記〕とぎ汁培養液や米ぬか培養液を使って十分な乳酸菌を増殖させた液のことを私は発酵乳酸菌液(発酵乳酸菌水)と呼びますが記事の中ではこれを単に乳酸菌液と表記しています。

なお塩や糖の分量について以下の文中ではグラム表記の他に「小さじ~杯強」「大さじ~杯強」という表記を使っています。塩や糖の比重は水よりも小さいので「小さじ1杯強」「大さじ1杯強」でそれぞれ約5g・約15gになります。つまり「強」はやや山になる程度の量を表しています。

米ぬかや米粉(片栗粉)の分量についても「小さじ」・「大さじ」表記を使いますがこれらについてはすりきりを目安にして下さい。

<乳酸菌を培養する(1)> で触れたように、現在私は『ブリタ』の「マレーラ XL(3.5リットル) という簡易浄水器で水道水を濾過したものを乳酸菌培養に使っています。

 米乳酸菌の培養に用いる培養液のことを以後は単に 培養液 と表記します。また、米とぎ汁を使った乳酸菌培養液・米ぬかを使った乳酸菌培養液をそれぞれ「とぎ汁培養液」・「米ぬか培養液」と簡単に表記することがあります。

 ところで「培養液」といっても「とぎ汁培養液」や「米ぬか培養液」は単なる「培養液」ではありません。なぜかというと、白米や米ぬかには米の籾(もみ)に由来する乳酸菌がすでに付着しているので、「とぎ汁培養液」や「米ぬか培養液」には最初から乳酸菌が入っているからです。どこからか種となる乳酸菌を持ってきてそれを培養するわけではなく、自前の乳酸菌を増殖させ乳酸菌が十分にたくさん含まれた発酵液を作ること、それが米のとぎ汁や米ぬかを利用した乳酸菌培養の目的です。

 培養に用いるペットボトル等の容器は清潔なものを使って下さい。汚れたものを使うと失敗する確率が確実に高くなります。ひどく汚れてしまったペットボトルの洗浄については<乳酸菌を培養する(1)――〔基礎編〕米乳酸菌を培養してみた>の「黒カビについてのまとめ」を参考にして下さい。

 
通販で購入した米ぬかを使った乳酸菌培養

飯山さんのところの掲示板には「完全無農薬米コシヒカリさぬき姫 の米ぬか」『姫ぬか』がお奨めという投稿もありますが、900gで980円(税込み・送料別)はさすがに高すぎます。楽天内を探して『自然農法 米ぬか 2kg』(無農薬・無化学肥料・有機JAS米――青森県ときわ村産「つがるロマン」――の米ぬか)というのを見つけました。2kgで252円(税込み・送料別)なら妥当でしょう。送料(530円)の方が高くなってしまいますがこれはしかたありません。

〔注記〕 以下の培養実験で使用した米粉は高山製粉の「米の粉」、海水塩は味の素の「瀬戸のほんじお」、黒糖は上野砂糖の「黒砂糖 粉状」です。

まず最初に、<乳酸菌を培養する(2)> でご紹介した米ぬか培養液と同じ割合で試してみました。水2リットルに対して、「つがるロマン」の米ぬか大さじ4杯米粉小さじ4杯(いずれもすりきり)、それにあら塩小さじ1杯強×4を加えて2日ほど置きます(気泡の発生に伴ってぬかの成分が上の方に浮いてきますので、ときどきボトルの口をゆるめてガス抜きをした後にキャップをきちんとはめてよく攪拌します)。気温の上昇とともに酵素の働きが活発になったためか、二酸化炭素の発生量もかなり多いように感じます。2日ちょっと経って発泡がややおさまってきた頃に、黒糖大さじ1杯強×4を入れました。ボトルの上方にシュワシュワと沢山の気泡が集まってきます。それから2~3日でぬかの成分もその多くが下に沈殿し、液の色も薄くなりました。多少の発泡は続いていますが飲んでみるとかなり酸っぱい。pH試験紙は 3.5 くらいを示しました。芳香はまだしていませんが味はこれまで作ってきた乳酸菌液と同じです。ほぼ完成。その後2、3日でいい香りがするようになり、いつものように乳酸菌液ができあがりました。

この実験結果は、自家精米で得られる米ぬかの場合とほとんど同じです。つまり、今回購入した「つがるロマン」の米ぬかは乳酸菌培養に十分使えるということです。自家精米のものに比べて胚芽が少なく、その粒も小さいという違いはありますが、乳酸菌の増殖に必要な分量の胚芽は含まれているということでしょう。ぬかの中に生存している乳酸菌の数も自家精米のぬかと同等であると推察できます。なお、培養中の匂いはややぬか臭い感じです。目玉焼きの匂いはほとんどしませんでした。しかし、熟成後の香りはとぎ汁や自家製米ぬかで培養した乳酸菌液とまったく同じになりました。その後、何本か作りましたがすべて成功しています。

先日スーパーでにがりあらなみの本にがり)を購入してきました。100mlに含まれる成分はマグネシウム 4600mg、カリウム 3600mg、ナトリウム 2900mg、カルシウム 2200mgとなっています。私が今使っている海水塩(瀬戸のほんじお)には、100gあたりナトリウム 33.4g、マグネシウム 370mg、カリウム 3340mg、カルシウム 210mg が含まれていますので、乳酸菌培養に必要なミネラルは十分だと思っています。

しかし、せっかくにがりを買ってきたのでちょっと実験してみました。500mlのペットボトルを6本用意します。6本のそれぞれに 500mlの水あら塩小さじ1杯強米粉小さじ1杯とを入れ、2本ずつ3つのグループに分けます。

第1のグループの2本には 「つがるロマン」の米ぬか大さじ1杯ずつを入れ、第2のグループの2本には 自家精米の米ぬか大さじ1杯ずつを、そして第3のグループの2本には 「つがるロマン」の米ぬか大さじ1/2杯ずつと自家精米の米ぬか大さじ1/2杯ずつとを入れます。これで6本のどれにもすべて大さじ1杯の米ぬかが入ったことになります。

それぞれのグループの2本のうち1本にだけにがりを4滴ずつ入れます。こうして3つのグループに各2種、合計6本の米ぬか培養液ができました。実験中はすべてのボトルを平等に扱います。発生する気泡の量にかかわらずガス抜きと攪拌をこまめに行ないました。2日ちょっと後に、すべてのボトルに黒糖大さじ1杯強を入れました。その後も同様にガス抜きと攪拌をしました。

さて結果です。予想通りというか予想に反してというか…。5日後にすべての培養液がみな一斉に pH3.5 になりました。酸っぱさも味もすべて同等でした。匂いは多少の違いがありますが、2、3日して熟成すればみな同じような香りになると思います。

結論() 培養液を作るのに、にがり成分(主としてマグネシウム――塩化マグネシウム)が添加されたあら塩(海水塩・天日塩)を使っている場合には、特ににがりを入れる必要はない。
結論()「つがるロマン」の米ぬかは乳酸菌培養という目的に関しては自家精米の米ぬかとまったく遜色がない。

〔2013年9月17日 注記〕乳酸菌の培養に用いるペットボトルはできるだけきれいなものが望ましいのですが、乳酸菌液が入っていたボトルには雑菌がいないため乳酸菌液を使い終わったボトルの洗浄は水で数回すすぐだけで十分です。ただしボトル内部の肩口のところには浮遊してきた米ぬか成分やデンプンかすあるいは産膜などが付着しています。これらはこびり付いているわけではないのでブラシなどを使えば水で簡単に落ちます。でもこの作業はちょっと面倒です。私は「〔基礎編〕米乳酸菌を培養してみた」の「培養液の濾過・沈殿培養液・ボトル等の洗浄」でご紹介している「フルフルボトル洗い」を使っています。水といっしょにこのフルフルボトル洗いをボトルに入れて蓋をして横に振るだけで汚れがきれいに落ちるのでとても重宝しています。

〔注記〕 米ぬかを使った乳酸菌培養に関する基本的な事柄については <乳酸菌を培養する(2)> の「米ぬか培養液を利用して乳酸菌を培養する」の項をご覧下さい。

〔注記〕 米のとぎ汁や米ぬか水等を利用した米乳酸菌の培養に関する基本的な事項や知っておくべき大切な情報は <乳酸菌を培養する(1)――〔基礎編〕> に載せてあります。まだお読みでない場合は一通り目を通しておかれることをお勧めします。また、その記事には 乳酸菌液の利用・活用・効能関連記事へのリンク集 も載せてあります。

なお、日々の実践を通して新たに分かったことや新しい知見、あるいは誤っていた記述など、<乳酸菌を培養する(1)>の内容は頻繁に更新・追加されていますのでときどき目を通して頂ければ幸いです。

――乳酸菌を培養する――

   (1)〔基礎編〕  米乳酸菌を培養してみた(とぎ汁培養液)
   (2)〔応用編1〕米ぬか培養液・拡大培養
   (3)〔応用編2〕乳酸菌液で作る豆乳ヨーグルト
   (4)〔応用編3〕通販の米ぬかを使った米ぬか培養液
   (5)〔応用編4〕飯山氏、拡大培養の「秘法」を明かす
   (6)〔応用編5〕発泡乳酸菌液と乳酸菌風呂
   (7)〔応用編6〕乳清で作る豆乳ヨーグルト
   (8)〔応用編7〕乳酸菌風呂、その2
   (9)〔探究編1〕古米の玄米と米乳酸菌、玄米浸潤液
 (10)〔探究編2〕玄米浸潤培養液
 (11)〔探究編3〕黒糖と白糖、乳酸菌風呂3
 (12)〔探究編4〕米ぬかと糖だけを使った培養実験
 (13)〔展開編1〕玄米で作る豆乳ヨーグルト
 (14)〔展開編2〕とぎ汁で作る豆乳ヨーグルト
 (15)〔展開編3〕日本茶で作る豆乳ヨーグルト
 (16)〔展開編4〕豆乳だけでヨーグルトができた
 (17)〔展開編5〕植物系で作る豆乳ヨーグルトと内生菌 ―― 野菜・果実・穀物・蜂蜜・梅干…等で作るヨーグルトのまとめ
 (18)〔探究編5〕米乳酸菌は120℃に耐えるか
 (19)〔発展編1〕驚異の玄米浸漬培養液
 (20)〔探究編6〕炊いたご飯と乳酸菌
 (21)〔展開編6〕超大雑把な蓬乳酸菌の培養
 (22)〔発展編2〕玄米豆乳乳酸菌液で作る豆乳ヨーグルト
 (23)〔発展編3〕濃いとぎ汁と乳酸菌の増殖率
 (24)〔探究編7〕白米浸漬培養液も乳酸菌が多い
 (25)〔基礎編2〕七分づき米のとぎ汁培養液
 (26)〔発展編4〕米麹の力(米と麹で作る濃密な乳酸菌液)
 (27)〔発展編5〕黒糖と米麹の併用/米麹と産膜性酢酸菌
 (28)〔展開編7〕手軽にできる蓬乳酸菌の培養
 (29)〔展開編8〕色がきれいな赤紫蘇乳酸菌液
 (30)〔展開編9〕ミカンの皮の乳酸菌液

 乳酸菌を培養する(1)~(30)をまとめて読む。

(関連記事)

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言語関連の用語について

 表現された言語(本来の意味の言語)を単に言葉あるいは言語、ことば…のように表記しています。ソシュール的な意味の言語(言語規範ないし思考言語)はカッコつきで「言語」あるいは「言語langue」・「ラング」・「ことば」等と表記しています。(背景色つきで「言語」のように表記している場合もあります)

 一般的な意味の概念を単に概念と表記し、ソシュール的な意味の概念(語の意義としての概念、いわゆるシニフィエ・語概念)はカッコつきで「概念」と表記します。(2006年9月9日以降)

 また、ある時期からは存在形態の違いに応じて現実形態表象形態概念形態のように用語の背景色を変えて区別しています(この文章では〈知覚形態〉も〈表象形態〉に含めています)。

 ソシュールの規定した用語を再規定し、次のような日本語に置き換えて表記します。詳細は「ソシュール用語の再規定(1)」を参照。

【規範レベルにおける再規定】

・シニフィアン  → 語韻     (ある語音から抽出された音韻)

・シニフィエ   → 語概念(語義) (ある語によって表わされるべき概念)

・シーニュ・記号 → 語規範(語観念)(ある語についての規範認識)

・記号の体系   → 語彙規範   (語すべてについての規範認識)

・言語      → 言語規範   (言語表現に関するすべての規範認識)

語概念・語韻は 語概念⇔語韻語韻⇔語概念)という連合した形で語規範として認識されています。語規範はこのように2つの概念的認識が連合した規範認識です。ソシュールは「言語langue」を「諸記号」相互の規定関係と考えてこれを「記号の体系」あるいは「連合関係」と呼びますが、「記号の体系・連合関係」の実体は語彙規範であり、言語規範を構成している一つの規範認識です。規範認識は概念化された認識つまり〈概念形態〉の認識なのです。

なお、構造言語学・構造主義では「連合関係」は「範列関係(範例関係)」(「パラディグム」)といいかえられその意義も拡張されています。

 語・内語・言語・内言(内言語・思考言語) について、語規範および言語規範に媒介される連合を、三浦つとむの主張する関係意味論の立場からつぎのように規定・定義しています。詳細は『「内語」「内言・思考言語」の再規定』を参照。(2006年10月23日以降)

  : 語規範に媒介された 語音個別概念 という連合を背後にもった表現。

内語 : 語規範に媒介された 語音像⇔個別概念 という連合を背後にもった認識。

言語 : 言語規範に媒介された 言語音(語音の連鎖)⇔個別概念の相互連関 という連合を背後にもった表現。

内言 : 言語規範に媒介された 言語音像(語音像の連鎖)⇔個別概念の相互連関 という連合を背後にもった認識・思考過程。

内語内言は〈表象形態〉の認識です。

なお、上のように規定した 内言(内言語・内的言語・思考言語)、 内語とソシュール派のいうそれらとを区別するために、ソシュール派のそれらは「内言」(「内言語」・「内的言語」・「思考言語」)、「内語」のようにカッコつきで表記します。

また、ソシュールは「内言」つまり表現を前提としない思考過程における内言および内言が行われる領域をも「言語langue」と呼んでいるので、これも必要に応じてカッコつきで「内言」・「内言語」・「内的言語」・「思考言語」のように表記します(これらはすべて内言と規定されます)。さらに、ソシュールは「内語の連鎖」(「分節」された「内言」)を「言連鎖」あるいは「連辞」と呼んでいますが、まぎらわしいので「連辞」に統一します(「連辞」も内言です)。この観点から見た「言語langue」は「連辞関係」と呼ばれます。ソシュールは「内語」あるいは「言語単位」の意味はこの「連辞関係」によって生まれると考え、その意味を「価値」と呼びます。構造言語学では「言(話し言葉)」や「書(書き言葉)」における語の連鎖をも「連辞」と呼び、「連辞関係」を「シンタグム」と呼んでいます。詳細は「ソシュールの「言語」(1)~(4)」「ソシュール用語の再規定(1)~(4)」「ソシュール「言語学」とは何か(1)~(8)」を参照。

 さらに、ソシュールは内言における 語音像⇔個別概念 という形態の連合も「シーニュ・記号」と呼んでいるので、このレベルでの「シニフィアン」・「シニフィエ」についてもきちんと再規定する必要があります。

【内言レベルにおける再規定】

・シニフィアン  → 語音像(個別概念と語規範に媒介されて形成される語音の表象)

・シニフィエ   → 個別概念(知覚や再現表象から形成され、語規範の媒介によって語音像と連合した個別概念)

・シーニュ・記号 → 内語

・言語      → 内言

ソシュールがともに「シーニュ・記号」と呼んでいる2種類の連合 語韻⇔語概念語規範)と 語音像⇔個別概念内語)とは形態が異なっていますのできちんと区別して扱う必要があります。

 また、実際に表現された言語レベルにおいても、語音個別概念 という形態の連合が「シーニュ・記号」と呼ばれることもありますので、このレベルでの「シニフィアン」・「シニフィエ」についてもきちんと再規定する必要があります。

【言語(形象)レベルにおける再規定】

・シニフィアン  → 語音個別概念語規範に媒介されて実際に表現された語の音声。文字言語では文字の形象

・シニフィエ   → 表現された語の意味。個別概念を介して間接的にと結びついている(この個別概念語規範の媒介によってと連合している)

・シーニュ・記号 → (表現されたもの)

・言語      → 言語(表現されたもの)

 語音言語音語音像言語音像語韻についての詳細は「言語音・言語音像・音韻についての覚書」を、内言内語については「ソシュール用語の再規定(4)――思考・内言」を参照して下さい。また、書き言葉や点字・手話についても言語規範が存在し、それらについても各レベルにおける考察が必要ですが、ここでは触れることができません。

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プロフィール

シカゴ・ブルース

シカゴ・ブルース (ID:okrchicagob)

1948年10月生れ(74歳♂)。国語と理科が好き。ことばの持つ意味と自然界で起きるできごとの不思議さについて子供のころからずっと関心を抱いていました。20代半ばに三浦つとむの書に出会って以来言語過程説の立場からことばについて考え続けています。長い間続けた自営(学習塾)の仕事を辞めた後は興味のあることに関して何でも好き勝手にあれこれ考える日々を過ごしています。千葉県西部在住。

2021年の2月下旬から海外通販(日系法人)を通じてイベルメクチンのジェネリック(イベルメクトール:インド Sun Pharma 社製)を購入し、定期的に服用しています。コロナワクチンは接種していません。

ツイッターは okrchicagob(メインアカウント)、または Chicagob Okr(サブアカウント)。

コメント等では略称の シカゴ を使うこともあります。

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意識と言語(こころとことば)

われわれは人間が『意識』をももっていることをみいだす。しかし『精神』は物質に『つかれて』いるという呪いをもともとおわされており、このばあいに物質は言語の形であらわれる。言語は意識とおなじようにふるい――言語は実践的な意識、他の人間にとっても存在し、したがってまた私自身にとってもはじめて存在する現実的な意識である。そして言語は意識とおなじように他の人間との交通の欲望、その必要からはじめて発生する。したがって意識ははじめからすでにひとつの社会的な産物であり、そして一般に人間が存在するかぎりそうであるほかはない。(マルクス・エンゲルス『ドイツ・イデオロギー』古在由重訳・岩波文庫)


ことばは、人間が心で思っていることをほかの人間に伝えるために使われています。ですから人間の心のありかたについて理解するならばことばのこともわかってきますし、またことばのありかたを理解するときにその場合の人間の心のこまかい動きもわかってきます。
このように、人間の心についての研究とことばについての研究とは密接な関係を持っていて、二つの研究はたがいに助け合いながらすすんでいくことになります。一方なしに他方だけが発展できるわけではありません。
…こうして考えていくと、これまでは神秘的にさえ思われたことばのありかたもまったく合理的だということがおわかりになるでしょう。(三浦つとむ『こころとことば』季節社他)


参考 『認識と言語の理論 第一部』 1章(1) 認識論と言語学との関係

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