私は2日に一回1合の白米を炊いて食べています。この白米は「 八ヶ岳たんぼのなかまの無農薬米」という玄米(2010年清里高原産・2011年精米)を家庭用精米器で自家精米したものです。その際には副産物として米ぬかもできます。5月初旬から始めた米乳酸菌の培養(とぎ汁培養)はこの白米のとぎ汁を使っています。そして途中から始めた米ぬか水による米乳酸菌の培養(米ぬか培養)は最初はこの副産物の米ぬかを使っていました(現在は通販で購入した無農薬有機栽培の米ぬかも併用――「乳酸菌を培養する(4)――〔応用編3〕通販の米ぬかを使ってみる」――を参照)。
私が玄米から自家精米したこの白米を食べ始めたのは昨年(2010年)の6月中旬です。6月の初めに玄米(2009年産・2010年精米)を譲ってもらいそれを精米するために家庭用精米器を購入してからずっとこの白米を食べ続けています(月に一回程度5kg入りの玄米を譲ってもらう)。実は最初のときにいただいた際には6月以前の玄米もたくさんありました。一昨年(2009年)に精米された2008年産玄米もあり、それについては「小鳥にでもあげて」といわれベランダにやってくるスズメたちに今でもそれを与えています(たくさんあるので未だに消化しきれない)――〔2012.02.12 追記〕昨年の10月初めからは〔2010年産年産白米「ひとめぼれ」米・2011年精米〕を食べています。放射性物質で汚染されていない2010(平成22)年産無農薬米を少し確保しておきたくて購入したものです。
さて、最近になって米乳酸菌はとてもたくましくてしぶといということを知りました。乳酸菌の仲間には普通知られている牛乳から作られるヨーグルトやチーズの製造に関与する動物性の乳酸菌ばかりではなく植物性のものもいて、植物性の乳酸菌は穀物や野菜・果物、野草などさまざまなものの葉や茎・果実・種などの表面や内部に共生しているということを米乳酸菌の培養を始めていろいろ調べて初めて知ったのでした。また、植物性乳酸菌は苛酷な条件下でも生き延びていること、乳酸菌の仲間は人間の腸内にも善玉菌の一種として生息しているばかりでなく皮膚にも常在菌として付着していることなども合わせて知りました。
米のとぎ汁を使った乳酸菌培養では白米の表面に付着している米乳酸菌(酵母や糀〈麹〉(こうじ)も共生している)にデンプンや糖などの栄養分とあら塩などのミネラルを与えて増殖させることが目的です。「米乳酸菌の培養」といえばふつうこのとぎ汁培養液(玄米のとぎ汁を用いたものもこれに含まれる)を用いたものをいいます。しかし米乳酸菌はもともと田んぼの稲の籾(もみ)の中で生きているものです。種籾から玄米へと精米され、さらに玄米から白米と米ぬかとに分離されるわけですから、白米のみならず米ぬかの中にも米乳酸菌がいます。むしろ白米よりも米ぬかの方が乳酸菌の密度が濃いともいえます(玄米200mlを精米すると白米1合強と米ぬか約50mlが得られる)。したがって米ぬかを水に溶き、米粉や糖・あら塩を与えることによっても同様に米乳酸菌や酵母・糀〈麹〉を増殖させることができます(「米ぬか30ml+米粉5ml+水」がとぎ汁1合分にほぼ相当する)。これが米ぬか培養液による米乳酸菌の培養です。そしてこれも大事なことですが米胚芽には乳酸菌の生育を促進する物質が含まれているということです。したがって米胚芽をその中に含む米のとぎ汁や米ぬか水は乳酸菌の培養液として最適な条件を備えていることも忘れてはならないでしょう(米胚芽の多くは米ぬかに含まれている。米胚芽はそのほかミネラルやアミノ酸等を豊富に含んでいる)。
前置きが長くなりました。私を含め米乳酸菌のとぎ汁培養および米ぬか培養を現在実践している方たちの間でほぼ常識とされていること、それはとぎ汁培養に用いる白米や玄米、米ぬか培養に用いる米ぬかはできるだけ新しいもの(できるだけ最近精米されたもの)、そしてできれば無農薬のものを使うのが乳酸菌培養に成功する秘訣であるということです。なぜなら古い米や米ぬかの中には乳酸菌が少ないために短時日で増殖させるのが難しく、また農薬を使用した米には乳酸菌が少ないだけでなくとぎ汁や米ぬか水に残留農薬が混じる可能性があるからです。培養の当初にできるだけ沢山の乳酸菌がいることとできるだけ安全な米が望ましいこととを考えれば至極当然な配慮であり、米乳酸菌の培養に失敗する方もいらっしゃるわけですからこれはとても大事なことがらであると私は思います。飯山さんが「新しい米を使え。無農薬のものを使え」とおっしゃっているのも非常に合理的なアドバイスであることが分かります。
しかしながら、確かにそうではあるけれど植物性乳酸菌のしぶとさを知った私の好奇心は逆にかき立てられました。古い玄米にも米乳酸菌が生きているのではないか、玄米の中には栄養分や水分、ミネラルも入っているし、乳酸菌は酸素が無くても無気呼吸によって生きていくためのエネルギーを作り出せるのだから古くなった玄米の中にも乳酸菌は生きているはずだ、と私は考えました。
決めてしまえばすぐ実行。さっそく8月28日の午後からテスト開始です。昨年(2010年)5月2日に精米された2009年産玄米の袋(ポリエチレン)の封を切り、とりあえず5カップ分の玄米を精米器に入れ約5合分の白米と米ぬかを手に入れました。2011年産米がまだ出回っていないので 2009年産玄米はまだ古米ですがほぼ2年前に収穫されたものなので実質的には古々米に近いものです。
〔追記〕この記事の末尾に追記した通り、1回目の玄米浸潤液と浸潤させた玄米のとぎ汁とを合わせて培養液を作り、研いだ玄米は食用に回す方法については、「乳酸菌を培養する(10)――〔探究編2〕玄米浸潤培養液」という記事にまとめました(2012年6月3日)。また、玄米を水に浸したままの状態で乳酸菌を培養し濃密な乳酸菌液を作る方法について、「乳酸菌を培養する(19)――〔発展編1〕驚異の玄米浸漬培養液」という記事を書きました(2013年9月21日)。興味のある方は是非合わせてお読みください。
この記事の目次
実験結果のまとめ
古米の玄米から得た白米・米ぬかを使った米乳酸菌培養実験のまとめ
〔2012年4月17日〕個々の実験経過の細かい内容は「実験の経過と結果」を読んで頂くことにして、最初にそれらの実験の結果を簡単にまとめておきます。
〔まとめ〕普通の玄米に比べると古米の玄米から得られる白米や米ぬかに含まれるデンプンはだいぶ少ないようです。このことから古米の玄米の中で乳酸菌や酵母はデンプンから作られるブドウ糖を栄養源として生き続けているのではないかと推測されます。そこでこれらの白米とぎ汁と米ぬか水には不足するデンプンを補うために市販の米粉を入れました。
しかし、考えてみると米粉の中にも乳酸菌や酵母が生息している可能性があります。もしそうだとすると、米粉を投入してしまったらたとえうまく乳酸菌や酵母が増殖したとしてもそれが古米由来のものなのか、それとも米粉由来のものなのか、その区別がつきません。そこで、米粉だけを使った培養液と米粉を補わないとぎ汁培養液・米ぬか培養液とを別に作ってあらためて追加実験を行いました。
その結果、米粉を補った培養液はもちろん、米粉を入れないとぎ汁培養液・米ぬか培養液と米粉だけを使った培養液の三者のいずれでも乳酸菌と酵母の増殖が認められ、普通のとぎ汁培養液と同じような経過をたどってどれも pH3.5 の完全な乳酸菌液になりました(米粉培養液の場合は完成するまでに時間がかかりました。使った米粉の量が十分ではなかったのではないかと思います)。
これらの実験結果から古米の玄米にも十分な数の乳酸菌や酵母・麹が生きていて、それなりの環境を与えれば増殖するということが分かりました。また、市販の米粉の中にも乳酸菌や酵母が生きていることも分かりました。その後、黒糖にも乳酸菌や酵母が生息していることが実験の結果確かめられました。
玄米リジュベラック
ところで、世にはリジュベラック * というものがあって、穀類や野菜、果実などを水に浸けてそこに生息している酵母を増殖させ、酵母が作り出す酵素を含むその水を飲用している方たちがいるようです。それらは発酵した水(発酵酵母液)であり、当然ながら酵母だけでなく乳酸菌も乳酸を作って増殖しています。塩(あら塩や岩塩などのミネラル含有塩)や砂糖(白糖・黒糖・てんさい糖など)を添加しないので pH はおそらく 4.0 くらいですが、乳酸菌が作り出す乳酸の働きで雑菌の繁殖を抑え完成の段階では十分な乳酸によって殺菌されるので、リジュベラックは雑菌のいない安全な飲み物になっているはずです。
〔注〕* rejuvelac:a drink(liquid) made from fermented sprouted soft grains. 小麦やライ麦、米などの穀類を少量の水に浸けて発芽させ、一旦水を切ってから適量の水(体積比で2~3倍)に 2~3日浸すと、穀類の種に生息している乳酸菌や酵母などの有用発酵微生物の働きで発酵液ができます(乳酸菌が作った乳酸のために pH4.0 程度の酸性水になっている)。その中には、増殖した乳酸菌や酵母がいるだけでなくビタミンB群、ビタミンK、ビタミンE、たんぱく質、デキストリン、炭水化物、アミロースの他に酵素やミネラルなどが含まれています。
もともとは発芽穀物の発酵液をリジュベラック(仏語。英語読み:リジュビーラック)と呼ぶようですが、穀類以外の野菜や果実や豆類、野草等にも乳酸菌や酵母は住んでいるので広義ではそれらの発酵液もリジュベラックと呼ばれています。その意味では糖分を加えて作る「野菜酵素水」とか「野草酵母」と呼ばれるものもリジュベラックの一種ですし、とぎ汁乳酸菌液もリジュベラックの仲間であるといえます。どれも原理は同じです。穀類や野菜、豆類・野草などの種や葉や果実に住んでいる乳酸菌や酵母などの発酵微生物を発酵環境に置けば発酵微生物たちは自然に増殖を始めます。増殖するための栄養分は植物の種や葉や果実が持っているので、水分を適切に与えて発酵微生物が発酵しやすい環境を作ってやれば発酵液ができるわけです(糖分や塩分を加えることによってより濃密で安全な発酵液ができます。野菜を塩漬けにしたり果実をつぶしたりして、野菜や果実が持っている水分をそのまま利用する方法もあります――漬物や果実酒など)。これらの発酵液には植物の種や葉や果実に含まれていたビタミン類やアミノ酸やミネラルなどのほかに発酵微生物が作り出した有機酸や各種の酵素が含まれています。
多くの植物に乳酸菌や酵母などの発酵微生物が共生しています。発酵微生物は植物から栄養分をもらう代わりに植物が他の雑菌に犯されて腐敗しないように守っているのでしょう。共生とは単に乳酸菌や酵母の相互依存関係だけではなく植物をも含む相互依存関係なのだと私は考えています。なお、米乳酸菌などの植物性乳酸菌は、暖かくて栄養分の豊富な動物の体内や皮膚に共生している動物性乳酸菌と違って、屋外の厳しい自然の中で少ない栄養分を食べて生き延びているのでとてもたくましいようです。
それらのリジュベラックの中に、玄米を水に浸して発芽玄米にして、その過程で増殖する乳酸菌や酵母の発酵によって作られる酵素を含む水、つまり玄米リジュベラックというものもあるようです。その中には十分な乳酸菌や酵母のほかに麹も生息しているはずなので、これを利用して発酵乳酸菌液を作ることができるはずです。実際、飯山さんの掲示板の書き込みでれんさんという方が研いだ古々米の玄米を水に浸けた(12~24時間)ものを使って乳酸菌液を作っているという報告がありました。
なお、志乃さんという方のブログにある玄米リジュベラック関連の二つの記事、ローフードレシピ。リジュビラック(発芽玄米で作ってみました。)とローフードレシピ。発芽玄米ヨーグルト。はとても興味深い内容です。一読をお奨めします。発芽玄米ヨーグルトについては『サムライ菊の助「畑日記」』の秘伝!生玄米ヨーグルトの作り方がオリジナル記事のようです。
玄米浸潤液による米乳酸菌培養実験のまとめ
そこで、私もれんさんにならって玄米(2009年産の古米)を研いだものを水に浸け、その浸潤液を培養液として用いた乳酸菌培養の実験をしてみました。その詳しい経過と結果は後の方を読んで頂くとして、ここで簡単にその結果をまとめておきます。
〔まとめ〕古米の玄米一合を研ぎ、500mlの水に約24時間浸潤させます。その浸潤液を濾し取ったものにあら塩約5グラム(小さじ1杯強)を加えて浸潤培養液を作り、さらに一日後に黒糖約15グラム(大さじ1杯強)を加えます。濾し取った玄米には新たに500mlの水を加えて浸潤させ、約24時間後に濾し取った浸潤液にあら塩を加え2回目の浸潤培養液とします。これにも約一日後に黒糖を入れます。このようにして第5回目までの浸潤培養液を作り、その後の経過を見ました。いずれの培養液もふつうのとぎ汁培養液と同じような経過をたどり 4~8日ですべての培養液が pH 3.5 に到達しました。
この結果から、たとえ古米であっても玄米の甘皮の下には乳酸菌や酵母・麹が生息していて水に浸すことによって増殖に適した環境の中に出て来ることが分かりました。濾し取った浸潤液の中には通常のとぎ汁よりも沢山の乳酸菌や酵母が見られました(とぎ汁培養液には見られない乳酸菌のコロニーも観察されました)。麹の数も多いようです。
以上の結果を踏まえ、浸潤液を作るのに用いた玄米を食用に回すことも考慮した実験をいろいろ試してみました。その実験結果から得られた玄米浸潤培養の方法については<乳酸菌を培養する(10)――〔探究編2〕玄米浸潤培養液>という記事にまとめてあります。
実験の経過と結果
〔注記〕 私は培養液のボトル一つ一つにラベルをつけています。とぎ汁培養の場合は "Tmmdd~"(mmddは月日。今日の場合は0902)、米ぬか培養の場合は "Nmmdd~"、2倍拡大培養の場合は "2KBmmdd~" といった具合です。"~"のところには必要に応じて識別のためのアルファベットや数字をつけます。また、この実験では米粉は『高山製粉』の「米の粉」、黒糖は『上野砂糖』の「黒砂糖 粉状」(商品名が「焚黒糖」に変わりました)、あら塩は『青い海』の「海水塩」を使用しています(100gあたりの含有量がカリウム350mg・マグネシウム790mg・カルシウム470mgとかなり多いですが価格は250g入り330円とちょっと高め。私は生活クラブ連合会から226円で購入しています)。それと「白米粉」とあるのは私が玄米から精米した白米を自家製粉したものです。
古米の玄米から得た白米・米ぬかを使って乳酸菌を培養する
とぎ汁培養液・米ぬか培養液
〔2011年8月28日午後〕 (1) N0828S(米ぬか培養液A――開始) 上で得た米ぬか(以後 "米ぬか100502" と表記)大さじすりきり1杯・米粉小さじすり切り1杯・あら塩約5グラムを 500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えた米ぬか培養液を作ります。
〔2011年8月28日夕〕 (2) T0828S(とぎ汁培養液A――開始) 上で得た白米(以後 "白米100502" と表記)1合をとぎ、とぎ汁約500mlとあら塩約5グラムとを500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えたとぎ汁培養液を作ります。
観察してみると、(1)(米ぬか培養液A――初日)のデンプン量が少ないようです。また(2)(とぎ汁培養液A――初日)にはデンプンがありますがその量は通常のとぎ汁培養液に比べるとその4分の1程度です。このままではデンプンが不足してうまく増殖してくれないのではと考えて、その晩私はそれぞれの培養液に米粉を小さじすり切り1杯ずつ追加しました。なお、(2)(とぎ汁培養液A――初日)からは細かい泡がわずかに発生していますが、(1)(米ぬか培養液A――初日)の方はおとなしいものでほとんど泡が見られません。
〔2011年8月29日〕 (1)(米ぬか培養液A――1日後)からごくわずかながら小泡が発生しているのが見られたので両方のボトルを攪拌しました。
〔2011年8月30日午前〕 確認のために顕微鏡で覗いてみました。(2)(とぎ汁培養液A――2日後)には少なめながらも増殖に問題なさそうなくらいの乳酸菌がいます。酵母もわずかながら…。(1)(米ぬか培養液A――2日後)の方は(2)に比べると乳酸菌の数がやや少ないようです。酵母の姿は探した限りでは見られませんでした。というわけで、乳酸菌の姿が確認されましたので私の推測は間違っていなかったことが分かりました。古い玄米の中でも乳酸菌や酵母が生きている、と…。
「でも…」と顕微鏡を覗きながら私は考えました。両方の培養液に私は市販の米粉を入れてしまった。もしこの米粉の中に乳酸菌がいたなら、古い玄米の中にも乳酸菌がいるという私の推測は必ずしも正しくないことになる。「失敗したなあ」と思いながらも「それでは米粉を入れた培養液を作って試してみればいい」という考えが同時に浮かびました。
米粉培養液
〔2011年8月30日午前〕 (3) K0830S(米粉培養液A――開始) 米粉小さじすり切り2杯とあら塩約5グラムとを500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えました。泡は発生しません。
〔2011年8月30日昼〕 米粉の実験もいいけれど、結果が分かるまでには時間がかかる。いっそのこと米粉を入れない培養液をあらためて作ればいいではないか。そう考えた私は米粉なしの培養液を作ることにしました。ただし、デンプンが足りないことは確かなので、とぎ汁の方は2合分で500mlの培養液を作り、米ぬかの方はぬかの量を2倍にした上で米粉のかわりに黒糖を入れた培養液を作りました。
(4) N0830S(米ぬか培養液B――開始) 米ぬか(米ぬか100502)大さじすりきり2杯・黒糖約5グラム・あら塩約5グラムを 500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えた米ぬか培養液を作ります。
(5) T0830S(とぎ汁培養液B――開始) 白米(白米100502)2合を約500mlの水でとぎ、とぎ汁とあら塩約5グラムとを500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えたとぎ汁培養液を作ります。
〔2011年8月30日夜〕 顕微鏡で見てみると (4)(米ぬか培養液B――初日)、(5)(とぎ汁培養液B――初日)のどちらにも十分な乳酸菌がいます。酵母の姿もちらほら…。米粉を入れなくても乳酸菌がいることが確認されました。古米の玄米の中にも乳酸菌や酵母は生きていたわけです。そうすると乳酸菌や酵母は生きていくために玄米の皮の下にあったデンプンを消費したはずです。そうしなければ生き延びることができません。通常の玄米を精米して得られる白米や米ぬかから作ったとぎ汁や米ぬか水に比べると、古い玄米から得られる白米や米ぬかから作ったとぎ汁や米ぬか水にはデンプンが少ないわけがこれで合理的に説明できます。
というわけで、あとはこの乳酸菌たちが増殖して乳酸菌液ができあがるのをじっくり待てばいいわけです。
〔2011年8月31日夜〕 ふと見ると (4)(米ぬか培養液B――1日後)の上部に気体が溜まっています。(5)(とぎ汁培養液B――1日後)の方は小泡を発しています。(5)(とぎ汁培養液B)はともかく (4)(米ぬか培養液B)は期待していなかったのでちょっとびっくりしました。もしかしたら二酸化炭素ではなく腐敗した結果の気体かもしれないと思って匂いを嗅いでみましたが特に異臭はなく、ふつうの米ぬか培養液の匂いと変わりはありません。ちょっと気になって顕微鏡で覗いて見ました。
(4)(米ぬか培養液B)はやはり乳酸菌がかなり増えていました。(5)(とぎ汁培養液B)も同様に乳酸菌が増えています。pHを調べると(4)が 4.0強 で(5)が 4.5弱です。(1)(米ぬか培養液A――3日後)と(2)(とぎ汁培養液A――3日後)のpHを測ってみるとそれぞれ 4.0、4.0強 でした。こちらは培養を開始して3日目、この日の午前中にそれぞれのボトルに黒糖を約15グラムずつ入れてあります。(1)と(2)には普通の培養液よりもデンプンの量が多めとはいえ、3日目で 4.0 はやはり早いかなという感じはします。
昨年5月に精米された玄米の中にいた乳酸菌たちはある意味では厳しい環境を生き延びてきたのでしょう。そんなところから急に快適な環境に置かれたために一気に増殖を始めたのかも知れません。当たっているかどうか分かりませんが…。
〔2011年9月1日午後〕 (1)(米ぬか培養液A――4日後)と(2)(とぎ汁培養液A――4日後)の pH がそれぞれ 3.8、4.0弱 になっていました。そして (3)(米粉培養液A――2日後)の pH が 4.5強 に。市販の米粉の中にも乳酸菌がいるのでしょうか。しばらく様子を見る必要がありそうです。なお、(4)(米ぬか培養液B――2日後)、(5)(とぎ汁培養液B――2日後)の pH は変わらず 4.5弱 および 4.0強 でした。
〔2011年9月2日午後〕 (3)(米粉培養液A――3日後)、(4)(米ぬか培養液B――3日後)、(5)(とぎ汁培養液B――3日後)のそれぞれに昨晩遅く黒糖を約15グラムずつ入れ、(4)(米ぬか培養液B)にはそれに加えて白米粉を小さじすり切り1杯入れました。その後今日の午後まで放置。(4)は現在さかんに発泡しています。ボトルの上部には半日余りで溜まった気体があります。なお、(4)以外は至って静かです。
〔2011年9月2日夕〕 (4)(米ぬか培養液B――3日後)の発泡がおさまりました。pH を調べると変わらず 4.0強。(1)(米ぬか培養液A――5日後)、(2)(とぎ汁培養液A――5日後)の pH はそれぞれ 3.5 および 3.5強。(3)(米粉培養液A――3日後)は変わらず 4.5強。(5)(とぎ汁培養液B――3日後)も変わらず 4.5弱でした。(1)、(2)は着実に乳酸が産生されているようです。
発泡した割には(4)(米ぬか培養液B――3日後)の pH がほとんど変わらないのは乳酸菌ではなく酵母が増えているのかも知れません。もしかすると投入した白米粉の中にいた酵母かも…。
さて、(4)の発泡の陰に隠れて非常に地味な (1)(米ぬか培養液A)ですが、発泡も小泡も少ないのにもかかわらず上記のように短時日(5日)で pH 3.5 に到達しました。
〔2011年9月2日夜〕 (1)(とぎ汁培養液A――5日後)には米粉が入っているにもかかわらず発泡がありません。(4)(米ぬか培養液B――3日後)の派手な発泡が単にデンプンを入れたことによるものでなく白米粉を入れたことが原因であることを確かめるためには白米粉のかわりに米粉を入れたもので試してみれば分かります。そこで、(6) N0902S(米ぬか培養液C――開始) 米ぬか(米ぬか100502)大さじすりきり2杯・黒糖約5グラム・あら塩約5グラムを 500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えた米ぬか培養液を作りました。2日後、こんどは米粉と黒糖15グラムとを投入します。
〔2011年9月3日午前〕 (7) N0903S(米ぬか培養液D――開始) 米ぬか(米ぬか100502)大さじすりきり2杯・黒糖約5グラム・あら塩約5グラムを 500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えた米ぬか培養液を作りました。(7)には黒糖のみで白米粉も米粉も入れずに様子を見ます
玄米浸潤液
〔2011年9月3日午前〕 (8) G0903S(玄米浸潤液――開始) 私のところにある一番古い玄米(2009年5月10日の古々米:玄米090510)一合と黒糖約5グラム・あら塩約5グラムとを 500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えた玄米浸潤液を作りました。これにも乳酸菌はいるはずなので2日後あたりに黒糖を添加します。
〔2011年9月3日夜〕 飯山さんの掲示板を見ると古々米の玄米を使って米乳酸菌培養をしている方(れんさん)がいらっしゃいました。古々米にも乳酸菌がいるということですね。しかも、二回といだ後でも培養するのに十分な乳酸菌がいるようです。(8)(玄米浸潤液――初日)の経過が楽しみになってきました。
23:れん :2011/09/03 (Sat) 11:39:24
わたしは、古古米については玄米を2回研ぎ、そのとぎ汁はお風呂用に
飲用と霧吹き用は、研ぎ終わった玄米を12時間~24時間浸したものを使っています。
この6月から8月の気温でその日の気温に依り、数時間後からぷくぷくが始まりますので、わかりやすいと気に入っています。漉し取って、ご飯は炊き、NSK液は黒砂糖をわずかに餌に与えて、飲料と霧吹き用に使用しています。
〔2011年9月4日午後〕
(1)N0828S(米ぬか培養液A――7日後):pH 3.5弱。乳酸菌も酵母も沢山います。ぬか臭いですが異臭はありません。ほぼ完成です。
(2)T0828S(とぎ汁培養液A――7日後):pH 3.5。乳酸菌も酵母も沢山います。異臭はありません。ほんわかした匂いがしています。完成です。
(3)K0830S(米粉培養液A――5日後):pH 4.0弱。それなりの数の乳酸菌が増殖しています。酵母の姿もちらほら。市販の米粉の中にも乳酸菌がいるのでしょうか。それとも米粉をボトルに入れるときに使ったじょうごに付着していた米ぬかが入りこんだか。その可能性はあります。きれいな漏斗を使ってもう一度試してみます。もし市販の米粉で米乳酸菌が培養できるとしたら面白いことです。なお、(3)(米粉培養液A)には2日の夜遅く、黒糖約15グラムを投入済みです。
(4)N0830S(米ぬか培養液B――5日後):pH 4.0弱。米粉培養液と同じ酸度(酸性度)ですが乳酸菌の数はこちらの方が多い。酵母もずっとたくさんいます。
(5)T0830S(とぎ汁培養液B――5日後):pH 3.5。乳酸菌はたくさんいますが酵母はそれほどでもありません。米粉も白米粉も入れていないためでしょうか。発泡が始まったのであるいはこれから酵母が増えるかもしれません。
(6)N0902S(米ぬか培養液C――2日後):pH 4.5。乳酸菌も増殖していますが、酵母の数も相当です。出芽状態の酵母がたくさんいます。この培養液には米粉も白米粉も入れていません。予定を変更して今晩は米粉を入れずに黒糖だけを入れることにします。
(7)N0903S(米ぬか培養液D――1日後):pH 4.5強。乳酸菌はそれなりに増殖していましたが、プレパラートの中には酵母は見当たりませんでした。明日は米粉と黒糖を添加する予定。
(8)G0903S(玄米浸潤液――1日後):pH 4.5。今朝は活発に小泡を発していました。玄米の皮が剥がれて白っぽくなっています。顕微鏡で見ると非常に沢山の乳酸菌がいます。この数なら pH が3.5 でもおかしくないくらいです。玄米を一合入れたので乳酸菌が最初からたくさんいたのだと思われます。また、酵母もたくさんいます。最初に小さじすり切り1杯の黒糖を加えているのが効いているかもしれません。実際一昨日通常のとぎ汁培養液(500ml)にもあら塩5gの他に黒糖を小さじすり切り1杯入れたのですが(T0902)、こちらもいつもより増殖が速いようです(2日目で pH 4.5弱)。
〔2011年9月4日夕〕今日の午後、市販の米粉に乳酸菌がいるかどうかを確かめるためにきれいなペットボトルと漏斗とを用いて米粉培養液を作りました。
(9) K0904S(米粉培養液B――開始) 米粉小さじすり切り6杯とあら塩約5グラム、それに黒糖小さじすり切り1杯を 500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えました。培養液を作ってからほぼ6時間、覗いて見ると、乳酸菌の姿がちらほらと見えます。上に記したように酵母の姿も見られます。
それと留意すべきことがらとして、私が今使っている米粉はずいぶん前に買って封を切ったもので、封を切った後に乳酸菌が入りこんだ可能性がまったくないわけではない、ということを記しておきます。いずれ新品の米粉を購入して実験してみようと思っています。
さて、以上のことから古米や古々米の玄米にも乳酸菌や酵母が生きていることがはっきり分かりました。ただし古米や古々米の玄米の場合はれんさんのように2回といだあとの玄米を使った玄米浸潤液を培養液として使うのがよいと私は思います。培養液を得たあとの玄米は食べることもできますので試して見る価値はありそうです。
とりあえずここまでで記事にします。以後の経過はこの下に追記していきます。
〔2011年9月4日夜 追記〕 (9)(米粉培養液B――初日):記事を書いてから数時間で乳酸菌が少し増えました。それにともなって pH が多少下がっています。
〔2011年9月6日夜 追記〕
(1)N0828S(米ぬか培養液A――9日後):ぬか臭さは消えました。昨日から発泡しています。
(2)T0828S(とぎ汁培養液A――9日後):乳酸菌多し。発泡もせず静かな培養液ですが桿形・楕円形の酵母が大増殖しています。香りも味も悪くありません。
(3)K0830S(米粉培養液A――7日後):pH 3.5。乳酸菌が増殖。酵母も。とぎ汁培養や米ぬか培養では見たことのないほど沢山の糀〈麹〉系と思われる菌類がデンプンのところで繁殖しています。市販の米粉とあら塩・黒糖だけで乳酸菌が培養できてしまいました。新しい米粉を買ってきて確認のための追加実験が必要になりました。
(4)N0830S(米ぬか培養液B――7日後):pH 4.0弱で4日目から変化なし。乳酸菌の数はそれなりですが、酵母が非常にたくさんいます。それも桿形や楕円形のものよりも円形(球形)のものがずっと多い。発泡は酵母の増殖にともなうものだったのだろうと思われます。現在、発泡はおさまっています。クスリっぽい匂いがします。やや酸っぱいものの普通の乳酸菌液とは味が違います。
(5)T0830S(とぎ汁培養液B――7日後):6日目。pH 3.5。こちらもクスリっぽい匂い。あまり酸っぱくありませんし、普通の乳酸菌液とは味が違います。乳酸菌はたくさんいます。酵母の数は少なめ。桿形や楕円形のものよりも円形のものの方が多いようです。
(6)N0902S(米ぬか培養液C――4日後):pH 4.0。昨晩、黒糖を約5グラム入れました。今日の午後から盛んに発泡しています。乳酸菌は確実に増えています。乳酸菌よりもやや大きめの細菌が連鎖して長くなった状態のものも沢山見られます。この細菌が何であるかは分かりませんが、普通の乳酸菌液の中にもわずかながら存在している細菌です。円形の酵母の数がかなり増えました。桿形酵母の姿が消えて円形・楕円形のものばかりになりました。
(7)N0903S(米ぬか培養液D――3日後):昨晩、米粉小さじすり切り1杯と黒糖約5グラムとを入れました。pH 4.0強。乳酸菌は増えています。酵母は桿形・楕円形のものが沢山増えています。昨晩の米粉のせいかもしれません。白米粉を入れた(4)(米ぬか培養液B――7日後)とはだいぶ違います。酵母を増やすには白米粉よりも米粉を入れた方がいいようです。
(8)G0903S(玄米浸潤液――3日後):pH 4.0。今日の昼前にザルと木綿の布で濾過しました。濾過後の培養液が少なかったので水を加えました。それにも関わらず pH は着実に下がっています(なお、ザルで選り分けた玄米はすすいだあと、炊飯し昼食として食べました。味は可もなく不可もなし)。さすが1合分の玄米、乳酸菌の数は圧倒的です。乳酸菌よりやや大きめの細菌もふつうの乳酸菌培養液と同じくらいの割合で混じっています。ただし酵母の姿はちらほらしかみえません。
(9)K0904S(米粉培養液B――2日後):pH 4.5。乳酸菌は増えています。桿形酵母の姿も見えます。通常のとぎ汁培養液や米ぬか培養液にはほとんど見られないことですが、乳酸菌が集まっているところが至るところに見られます。
〔2011年9月7日夕 追記〕
今日の午後、(9)(米粉培養液B――3日後)が pH 4.0弱 になり、(4)(米ぬか培養液B――8日後)は 4.0弱 のまま変わらずでした。この二つ以外の培養液は今日の午後までにすべて 3.5 に到達しました。(4)(米ぬか培養液B)は液の色も薄くならずこれ以上 pH が下がる気配がありません。これは失敗作ですね。
以上の結果から古米や古々米の玄米にも乳酸菌や酵母が生きていて、それなりの環境を与えれば増殖するということが分かりました。ただし、2年以上前の古米や古々米の玄米を精米してできた米ぬかは利用しない方がよいと思います。
結論としては、古米や古々米の玄米を2回とぎ、とぎ終わった玄米を水に12時間~24時間浸した後、濾し取った浸潤液を培養液とし、玄米は食用に供するというれんさんの方法は、まだ使わずに残っている2年以上前の古米・古々米の玄米を活用する方法として非常に有効だと思います。この方法は今後とり入れていきます。ただし、この場合のとぎ汁も使わずに捨てるのがよいと私は思っています。
また、市販の米粉の中にも乳酸菌や酵母が生きているらしいことも分かりました。これについてはいずれ新品の米粉を購入して追加確認実験をする予定です。なお、飯山さんの掲示板で出た話題ですが市販のユーカリ茶やヨモギ茶、ドクダミ茶、チャーガ茶などは焙煎していないのでその中に乳酸菌や酵母・光合成細菌が生きているということです。いずれこれらについても乳酸菌の培養に挑戦してみようと思っています。
〔2011年9月10日夕 追記〕
(9)K0904S(米粉培養液B――6日目):pH 3.5強。これまでに作った乳酸菌液の中にもこれほど乳酸菌の密度の高いものはなかったように思います。当初の米粉の量が小さじすり切り6杯とその量が多かったことは確かですが、最初の乳酸菌の数はそれほどではありませんでした。酵母や麹(こうじ)らしきものもそれなりにいましたが…。他の乳酸菌液と明らかに様子が違うのは乳酸菌の小コロニーがたくさん見られること、酵母の集団の中に乳酸菌がたくさん入りこんで中くらいのコロニーをつくっていること、円形・楕円形・桿形の酵母がたくさん集まっているところ(デンプンの周り)にやはり乳酸菌がたくさん集まった大コロニーが散見されること、…などです。
それでもまだ甘さが残っているのは、米粉のデンプンが十分あるからでしょう。次回は米粉の量をもう少し減らしてもいいかもしれません。いずれにせよ、新しい米粉を購入して確認のための追加実験をする必要があるようです。
〔2011年9月27日 追記〕 古米の玄米から得た白米および米ぬかを使った上記の各実験において当初から黒糖を約5グラム加えましたが、その理由はこれによって乳酸菌の増殖の速度が速まるのではないかと期待したためです。しかしむしろ一部の実験ではデンプンの消費を抑制する結果、かえって熟成するまでの時間が余分にかかってしまいました。やはり黒糖は2日後あたりにデンプンがある程度消費された頃合いを見て投入するのがよいようです。
その後の追加実験
市販の新しい米粉を使った米粉培養液
〔2011年9月24日〕先週の半ばに新しい米粉を買ってきて、市販の米粉に乳酸菌がいるかどうかをあらためて確認するための追加実験を行いました。予想していた通り、乳酸菌の培養に成功しましたので簡単に経過と結果のみを書きます。
米粉小さじすり切り2杯とあら塩約5グラムとを 500mlのペットボトルに入れ水を口の直下まで加えました。1日目、小泡を発生。2日後に黒糖を約15グラム加えて経過を見ました。pH はまずまず順当に下がり続けちょうど1週間後に 3.5 に到達しました。
この追加実験の結果、市販の米粉の中でも乳酸菌や酵母が生きていることが分かりました。植物性乳酸菌のたくましさを考えると当然の結果であるように私には思えます。これ以外の他の市販植物性食品の中にも乳酸菌は生きているだろうと推察しています(市販されているヨモギ茶やユーカリ茶などの中で生きていることは飯山さんの掲示板の書き込みですでに報告されています)。
――〔2013年6月3日 追記〕「乳酸菌を培養する(17)――〔展開編5〕植物系で作る豆乳ヨーグルトと内生菌」で取り上げているさまざまな植物性食品を使った豆乳ヨーグルト作りの実験結果は私のこの推測が正しかったことを示しています。
古米の玄米浸潤液を使った乳酸菌培養
〔メモ〕 8月末から9月初めにかけて行なった古米・古々米の実験の結果(古米や古々米の中にも確かに乳酸菌や酵母が生きていたが、古米の玄米を精米した白米や米ぬかにはふつうのものよりもデンプンが少なかった)から、米乳酸菌や米酵母は玄米の甘皮の下にある白米のデンプンを栄養源として生きていることがほぼ確実であると考えられます。玄米を精米して得られる白米と米ぬかの両方に乳酸菌が生存している理由がこれで合理的に説明できるからです。
〔2011年9月24日〕9月3日の項で引用したように、れんさんという方が「研ぎ終わった玄米を12時間~24時間浸したものを使って」乳酸菌の培養をしていると飯山さんの掲示板に書いておられます。二度とぎした玄米をつけておいた水が簡単に米乳酸菌の培養液になるということは、二度といだ後であっても玄米の中には培養するのに十分な数の米乳酸菌が確実に残っている、つまり玄米の甘皮の内側で米乳酸菌が生きているということです。れんさんの投稿記事はこのように非常に重要なことを示唆しています。
というわけで、それを確かめるべくれんさんの日々の実践を私も追実験してみることにしました。ただし、消臭用・乳酸菌風呂用の乳酸菌液はすでに十分ありますし、実験が煩雑になるので古米の一番とぎ汁・二番とぎ汁は使わずに廃棄し、研ぎ終わった古米の玄米を浸した水を使った実験だけを行ないました。以下では玄米を浸したこの水を玄米浸潤液(しんじゅんえき)(または浸潤液)と呼び、この液を濾し取ってあら塩等を加えた米乳酸菌培養液のことを玄米浸潤培養液(あるいは浸潤培養液)と呼ぶことにします。
古米の玄米浸潤培養液
〔2011年9月24日〕古米の玄米一合を2回とぎ、とぎ終わった玄米を広口瓶に入れそれに約500mlの水を加えふたをし、比較的暖かい場所に置きました。約24時間後に第1回目の浸潤液を濾し取って500mlのペットボトルに入れ、これにあら塩約5グラムを加え口の直下まで少量の水を追加し、これを第1回浸潤培養液としました。その後、広口瓶に残った玄米に 500mlの水を加えこれを第2回浸潤液としました。以後ほぼ24時間おきにこの行程を繰り返して第1回~第4回までの浸潤培養液を作りその観察を行ないました。それぞれの培養液には採取してから2日後に黒糖約15グラムを加えてその後の経過を見ました。
結果と経過
どの培養液も通常のとぎ汁培養液・米ぬか培養液とほとんど変わりのない経過をたどって 4~8日ですべての培養液が pH 3.5 に到達しました。この結果は二度とぎした玄米浸潤液であっても培養するのに十分な乳酸菌がいることを示しています。また、第2回目以降のものの方が第1回目よりも乳酸菌の密度が濃いことも分かりました(にもかかわらず初回の浸潤培養液は浸潤後最短の4日目で pH3.5に到達。第2回目も4日目。その他は5日以上かかっている)。その理由ですが、第2回目以降の玄米表面にはすでに増殖した乳酸菌が付着しているからではないかと私は推察しています。なお、米ぬか培養液からできた乳酸菌液に特有の匂い(「ぬかくさい」ので嫌だという人もいます)があるように、この玄米浸潤培養液にも特有の匂いがあります。人によって好みが分かれるかもしれません。しかし、この匂いは第2回目以降からだんだん強くなる傾向がありますので、第1回目のみを利用し、残った玄米を食用に回すようにすれば特に問題はないと思われます。
〔追記〕 1回目の玄米浸潤液と浸潤させた玄米のとぎ汁とを合わせて培養液を作り、研いだ玄米は食用に回す方法については、<乳酸菌を培養する(10)――〔探究編2〕玄米浸潤培養液>という記事にまとめました。この方法は古米や古々米のような古い玄米にも使えます。古くなった玄米であっても、それを使って培養液を得ると同時に24時間水に浸けた玄米は食用に回せるため、古米や古々米の活用法としては一石二鳥のすぐれた方法だと思います。この方法を教えてくださったれんさんにお礼を申し上げます。
というわけで、私のところには古米の玄米がまだたっぷり残っていますのでいざというときの食料および乳酸菌入手先として活用できるでしょう。もっとも乳酸菌はしぶといので他の方法で手に入れることはさほど難しくないように思います。たとえば「乳酸菌を培養する(8)――〔応用編6〕乳清で作る豆乳ヨーグルト」に書いたように豆乳ヨーグルトの乳清は使い方次第でとても有用な乳酸菌培養の種になると私は思っています。つまり、豆乳ヨーグルト自体が勝手のよい拡大培養手段になるのではないかと私は期待しています(乳清を使って作った豆乳ヨーグルトから時々乳清を手に入れるようにすればかなり長期にわたって豆乳ヨーグルトの再生産ができます)。
〔2011年9月25日 追記〕 上記の第1回浸潤培養液から得られた乳酸菌液は先に記したように匂いがほとんど気になりません。味も特に癖はありません。この乳酸菌液を使って昨晩仕込んだ豆乳ヨーグルトが今日の午前中にできました(豆乳250mlに対して乳酸菌液30ml)。気温が24~25℃と低めだったこともあって固まるまでに約15時間かかりましたが、なめらかできれいなヨーグルトに仕上がっていました。冷蔵庫に入れずにそのまま数時間おいて昼食後に食べてみました。とてもおいしい。酸味はまだほとんどなく柔らかめ、こくが感じられそのまま何も載せずに半分の量をあっという間に食べてしまいました。残りの半量は夕方おやつがわりに食べようと思います(オリゴのおかげをかけて)。
〔注記〕米のとぎ汁や米ぬか水等を利用した米乳酸菌の培養に関する基本的な事項や知っておくべき大切な情報は <乳酸菌を培養する(1)――〔基礎編〕> に載せてあります。まだお読みでない場合は一通り目を通しておかれることをお勧めします。また、その記事には 乳酸菌液の利用・活用・効能 や 関連記事へのリンク集 も載せてあります。
なお、日々の実践を通して新たに分かったことや新しい知見、あるいは誤っていた記述など、<乳酸菌を培養する(1)>の内容は頻繁に更新・追加されていますのでときどき目を通して頂ければ幸いです。
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