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2012年10月19日(金)| 科学>発酵 |  
乳酸菌を培養する(12)――〔探究編4〕米ぬかと糖だけを使った培養実験

これまでに私は〈白米のとぎ汁〉〈玄米のとぎ汁〉〈米ぬか+デンプン+水〉〈玄米浸潤液+デンプン〉〈玄米浸潤液+浸潤後の玄米とぎ汁〉あるいは〈米粉+水〉〈白米粉+水〉〈玄米粉+水〉等を培養液として使った米乳酸菌の培養実践を数多く行なってきました。

デンプン源としては、片栗粉・米粉・白米粉・玄米粉を使いました(片栗粉と米粉は市販のもの、白米粉と玄米粉は家にあった白米・玄米をそれぞれ家庭用製粉機で粉にしたもの)。

白米や玄米や米ぬか、市販の米粉の中には乳酸菌その他の発酵微生物が生きているので、上記の培養液の中にはどれも最初から乳酸菌や酵母などが含まれています。そしていずれの培養液にも栄養源としてのデンプンと、種籾の中に含まれていたデンプン分解酵素や各種の酵素が入っています

私が行なった米乳酸菌の培養実験・実践の多くはあら塩と砂糖を加えたものです。昨年5月に始めた当初の数回はあら塩も糖も使いませんでしたが、その場合はできあがった乳酸菌液の pH は 4.5~4.0 にとどまっていました。米乳酸菌培養に白糖*1を使い始めたのは大分後になってからということもあって、実践のほとんどが黒糖・加工黒糖・粗糖*2を用いたものです。黒糖(加工黒糖・粗糖)を加える場合、培養液に初めから入れると乳酸菌液の pH は長い間 4.5~4.0 にとどまってしまうため、黒糖(加工黒糖・粗糖)は培養開始から約2日後に投入する必要があります。そうすることによって培養初期に乳酸菌を先に大増殖させて、4~7日後くらいまでに乳酸菌液の pH を 3.5 に到達させることが可能になります(培養環境の温度が高いほど早く 3.5 に到達します)。その結果、最初に挙げた培養液のすべてにおいて、初日にあら塩*3、2日後に黒糖(加工黒糖・粗糖)を加えることによって pH3.5 の乳酸菌液を得ることに成功しています。

*1 白糖:三井製糖『上白糖

*2 黒糖:日新製糖『粉末黒砂糖
  加工黒糖:上野砂糖『焚黒糖』(旧商品名『黒砂糖』)
  粗糖:青い海『素精糖

*3 あら塩:青い海『海水塩

 
米ぬかと砂糖だけを使った培養実験

ところが<乳酸菌を培養する(11)――〔探究編3〕黒糖と白糖、白糖乳酸菌風呂>に書いたように、白糖の場合には培養液の中にあら塩と一緒に最初から白糖を入れても3~7日で pH が 3.5 に到達することが分かりました。というより白糖の場合には2日後に入れるよりもむしろ最初から入れた方が早く 3.5 に到達すること、酵母の増殖も早まることが分かりました。また、白糖乳酸菌液は黒糖乳酸菌液に比べて酵母が少ないということも経験的に分かりました(初日に白糖を入れることによって酵母はそれなりに増える)。

上に挙げた培養液にはいずれもデンプンが含まれています。砂糖を2日後に入れる培養方法の場合、乳酸菌の初期の大増殖に使われるエネルギー源はデンプンが分解されてできる麦芽糖やブドウ糖です。ところが白糖を初日に入れると pH が早めに 3.5 に到達するということは、初期の増殖において乳酸菌が白糖を利用しているということ、少なくとも初期においては酵母は白糖を効率的に利用できていないこと、この二つを示しています(黒糖や加工黒糖を最初に投入した場合は酵母が早めに増殖することから、酵母は黒糖や加工黒糖を効率的に利用していることが分かります)。

そんなことを考えているうちに「白糖があればデンプンはなくても大丈夫ではないか」という考えがふと頭に浮かびました。黒糖や加工黒糖、粗糖の中には乳酸菌や酵母が生きています。白糖の中には乳酸菌や酵母はいません。また、白糖の中には糖蜜成分がまったく含まれていません。黒糖や加工黒糖の中にいる乳酸菌や酵母の存在が関係しているのか、糖蜜成分の有無が関係しているのか、あるいは他の何かが関係しているのかは分かりませんが白糖が初期における乳酸菌の増殖に関与していることは明らかなのでとにかく実験してみることにしました。

私の手元には上記4種の砂糖(黒糖・加工黒糖・粗糖・白糖)があります。〈米ぬか+あら塩+水〉の培養液を用意し、別々に4種の砂糖を入れて様子を見ます。また、糖を最初から入れたものと、2日後に入れたものとの違いも観察します。米ぬかは通販で購入したデンプンの少ない「青森県ときわ村産「つがるロマン」の米ぬか)」(無農薬・無化学肥料・有機JAS米)を使います。あら塩は上記の「海水塩」。

500mlのペットボトルを8本用意し、それぞれに米ぬか大さじすりきり1杯とあら塩小さじ1杯強を入れ、首の下あたりまで水を入れます。8本を4本ずつ2つのグループに分けます。一方のグループの4本には黒糖・加工黒糖・粗糖・白糖をそれぞれ大さじ1杯強ずつ入れます(これをAグループと呼ぶことにします)。もう一方のグループの4本には2日後に黒糖・加工黒糖・粗糖・白糖をそれぞれ大さじ1杯強ずつ入れます(こちらはBグループと呼ぶことにします)。

通常の培養もやっているため余分な8本をホットマットの上に寝かす余地はないので、日当たりの良い窓際に8本を並べて置きます。実験は8月23日から9月末にかけて行ないました。晴れた日の昼間は30℃を越えますが、天気の悪い日や夜間は26~27℃辺りまで下がります。通常のとぎ汁培養でもこの環境では pH3.5 になるまで5、6日かかります。

さて、結果です。それぞれのボトルについて pH が (1)5.0、(2)4.5、(3)4.0、(4)3.5、(5)3.0 になるまでにそれぞれ何日かかったかをまとめると次のようになります。

Aグループ(初日に砂糖を入れたもの)

 黒糖  :(1)2日後、(2)5日後、(3)8日後、(4)到達せず
 加工黒糖:(1)2日後、(2)5日後、(3)8日後、(4)到達せず
 粗糖  :(1)2日後、(2)5日後、(3)8日後、(4)到達せず
 白糖  :(1)2日後、(2)3日後、(3)4日後、(4)5日後、  (5)15日後

Bグループ(2日後に砂糖を入れたもの)

 黒糖  :(1)3日後、(2)5日後、(3)8日後、(4)到達せず
 加工黒糖:(1)3日後、(2)5日後、(3)6日後、(4)7日後、  (5)到達せず
 粗糖  :(1)3日後、(2)5日後、(3)8日後、(4)18日後、(5)36日後
 白糖  :(1)3日後、(2)5日後、(3)7日後、(4)8日後、  (5)15日後

デンプンがほとんどない培養液でも初日に糖を入れた場合、白糖以外は pH が 3.5 に到達しないことが分かりました。これは予想通り。しかし、白糖はデンプンがなくても 3.5 に到達すること、しかも2日後に入れるよりも最初から入れた方が早く 3.5 に到達することが分かりました。

2日後に糖を入れた場合、デンプンがないにも関わらず加工黒糖は7日で 3.5 に到達しました。これは予想していませんでした。粗糖の18日後は加工黒糖の結果を見ていたのでなんとなく納得。しかし、黒糖が1か月以上経っても 3.5 に到達しなかったのは期待外れでした。黒糖や粗糖を使う場合はデンプンが必要ということでしょう。また、白糖は2日後に入れた場合に8日もかかっています。白糖はやはり最初から入れる方がいいようです。なお、2日後に糖を入れる場合デンプンがあれば、黒糖・加工黒糖・粗糖・白糖のどれもが4~7日で pH3.5 に到達することはこれまで数多くの実践を通して確認済みです

この実験で「白糖があればデンプンはなくても大丈夫ではないか」という私の予想が正しかったことが確認できました。しかし、乳酸菌は白糖だけで初期の増殖ができるのに、酵母はなぜできないのかその理由は今のところはっきりとは分かりません。細胞形成に必要な栄養分のうちミネラルはあら塩にも含まれていますが糖蜜に含まれているタンパク質や脂質等の成分が関係している可能性は考えられます。タンパク質や脂質はとぎ汁や米ぬか等にも含まれていますが乳酸菌に比べて身体の大きい酵母が増殖するには足りないかもしれません。なお、乳酸菌や酵母も細胞を作るために必要なタンパク質などは外部から取り入れることができなければ糖などを利用して自ら作り出すことができますから時間さえあれば増殖することはできます。

なお、糖とあら塩だけでデンプンを入れない米ぬか培養液・米ぬか乳酸菌液は嫌な匂いがします。糠漬けの糠床は特有の匂いがしますがそれと比べてもさらに嫌な匂いです。そして黒糖や粗糖を入れたものでは糖蜜の色のために隠れてしまって分かりませんが白糖を使ったものでは米ぬかから出てきた色素のために褐色になります。白糖を使ったとぎ汁乳酸菌液やデンプンを入れた白糖米ぬか乳酸菌液あるいは白糖を使った玄米浸漬乳酸菌液ではこのような褐変は見られません。結局のところ、デンプンを入れない米ぬか培養液はたとえ pH が3.5 になったとしても完成するまでに時間がかかる上に嫌な匂いがしますし、白糖の場合は培養液が褐色になってしまうわけです。

というわけで、黒糖・粗糖を使う培養液にはデンプンが絶対に必要である加工黒糖や白糖の場合もデンプンは入れた方がよい)こと、黒糖・加工黒糖・粗糖は2日後に入れなければならないこと、白糖は最初に入れる方がよいということがあらためて確認されました。いずれにしても米ぬか培養ではデンプンを入れることが必須であるというのがこの実験で得られた結論ではないかと思います。

〔注記〕pH試験紙については「〔基礎編〕米乳酸菌を培養してみた」の「pH試験紙・培養液の色(10円硬貨の利用)」をご覧下さい。pH試験紙が手元にない場合の簡易判定に10円硬貨を利用する方法についても記してあります。

〔注記〕乳酸菌の培養に用いて使い終わった使ったペットボトルの汚れは水で洗うだけで十分ですがボトル内部の肩口の辺りに付着している浮遊物や産膜などはブラシで落とせます。なお、「〔基礎編〕米乳酸菌を培養してみた」の「培養液の濾過・沈殿培養液・ボトル等の洗浄」でご紹介している「フルフルボトル洗い」を使うと手間がかからず簡単にペットボトルの洗浄ができます。

〔注記〕 米のとぎ汁や米ぬか水等を利用した米乳酸菌の培養に関する基本的な事項や知っておくべき大切な情報は <乳酸菌を培養する(1)――〔基礎編〕> に載せてあります。まだお読みでない場合は一通り目を通しておかれることをお勧めします。また、その記事には 乳酸菌液の利用・活用・効能関連記事へのリンク集 も載せてあります。

なお、日々の実践を通して新たに分かったことや新しい知見、あるいは誤っていた記述など、<乳酸菌を培養する(1)>の内容は頻繁に更新・追加されていますのでときどき目を通して頂ければ幸いです。

――乳酸菌を培養する――

   (1)〔基礎編〕  米乳酸菌を培養してみた(とぎ汁培養液)
   (2)〔応用編1〕米ぬか培養液・拡大培養
   (3)〔応用編2〕乳酸菌液で作る豆乳ヨーグルト
   (4)〔応用編3〕通販の米ぬかを使った米ぬか培養液
   (5)〔応用編4〕飯山氏、拡大培養の「秘法」を明かす
   (6)〔応用編5〕発泡乳酸菌液と乳酸菌風呂
   (7)〔応用編6〕乳清で作る豆乳ヨーグルト
   (8)〔応用編7〕乳酸菌風呂、その2
   (9)〔探究編1〕古米の玄米と米乳酸菌、玄米浸潤液
 (10)〔探究編2〕玄米浸潤培養液
 (11)〔探究編3〕黒糖と白糖、乳酸菌風呂3
 (12)〔探究編4〕米ぬかと糖だけを使った培養実験
 (13)〔展開編1〕玄米で作る豆乳ヨーグルト
 (14)〔展開編2〕とぎ汁で作る豆乳ヨーグルト
 (15)〔展開編3〕日本茶で作る豆乳ヨーグルト
 (16)〔展開編4〕豆乳だけでヨーグルトができた
 (17)〔展開編5〕植物系で作る豆乳ヨーグルトと内生菌 ―― 野菜・果実・穀物・蜂蜜・梅干…等で作るヨーグルトのまとめ
 (18)〔探究編5〕米乳酸菌は120℃に耐えるか
 (19)〔発展編1〕驚異の玄米浸漬培養液
 (20)〔探究編6〕炊いたご飯と乳酸菌
 (21)〔展開編6〕超大雑把な蓬乳酸菌の培養
 (22)〔発展編2〕玄米豆乳乳酸菌液で作る豆乳ヨーグルト
 (23)〔発展編3〕濃いとぎ汁と乳酸菌の増殖率
 (24)〔探究編7〕白米浸漬培養液も乳酸菌が多い
 (25)〔基礎編2〕七分づき米のとぎ汁培養液
 (26)〔発展編4〕米麹の力(米と麹で作る濃密な乳酸菌液)
 (27)〔発展編5〕黒糖と米麹の併用/米麹と産膜性酢酸菌
 (28)〔展開編7〕手軽にできる蓬乳酸菌の培養
 (29)〔展開編8〕色がきれいな赤紫蘇乳酸菌液
 (30)〔展開編9〕ミカンの皮の乳酸菌液

 乳酸菌を培養する(1)~(30)をまとめて読む。

(関連記事)

科学 | Trackback (0) | Comment (4) | URL | 携帯 | スマフォ |  | 記事番号:288
コメント
 
[620] 
2012/11/21(水)23:38:46 | URL | 八空[編集
素晴らしい探究心ですね。
非常にためになりました。
ありがとうございます。
 
[622] ありがとうございます
2012/11/23(金)18:15:25 | URL | シカゴ・ブルース[編集
八空さん、コメントありがとうございます。

趣味と実益を兼ねて続けている乳酸菌培養ですが、ブログの記事にまとめるということはやはりだれかに読んでいただきたいという気持ちがあってのことですので、お読みいただいただけでなくこのような感想を書いてもらえるのはとてもうれしいことです。
 
[627] 研究
2012/12/09(日)22:03:06 | URL | さば[編集
「すぐき漬け」という京野菜の漬物に含まれる植物性乳酸菌「ラブレ菌」を培養している人のブログをたまたま拝見し、紆余曲折の末、こちらへ辿りつきましたが、色々と研究されているので、読み込んでしまいました。

ビールの自作の経験があるため、米ぬか醗酵もやってみたいなと思っているところです。
 
[628] Re: 研究
2012/12/10(月)03:18:29 | URL | シカゴ・ブルース[編集
さばさん、こんばんは。

「ラブレ菌」を培養している人がいらっしゃるのですか。おもしろそうです。
ラブレ菌を使ったヨーグルトがありますよね。
そのヨーグルトを種にして豆乳ヨーグルトを作ったことがあります。第2世代あたりまでは
おなじような感じでおいしいヨーグルトができました。

ただし、種継ぎ法は繰り返しているうちに他の乳酸菌が優位になるのかそのうちに違った風味になってしまいますね。

いずれにしても植物乳酸菌はとてもたくましいようで、昨日はとぎ汁+豆乳でヨーグルトができることを確認しました。この分ではその辺に生えている食用にできそうな草や野菜にあら塩を少々加えたものでもヨーグルトができそうに思えます。

>色々と研究されているので、読み込んでしまいました。

半分くらいは好奇心を満たすためにやっていますが、最初は好奇心だけだったのがいまでは米乳酸菌液の利用範囲の幅広さとその効能のすばらしさに気がついてほとんど実用のために培養している自分に気がつきました。

> ビールの自作の経験があるため、米ぬか醗酵もやってみたいなと思っているところです。

私は玄米を自家精米した白米を食べています(玄米も食べていますが…)。普通なら捨ててしまう米ぬかも乳酸菌培養に使えるので重宝しています。もちろん白米とぎ汁も、玄米とぎ汁も捨てることなく乳酸菌培養に使っています。昨年の5月に知るまでは米に乳酸菌が生きているなんて思いもよりませんでした。とぎ汁培養を続ける中で実はほとんどの植物に乳酸菌や酵母が生息していることを知ってとても驚いています。

やればやるほど発酵微生物の生態の奥深さを実感する今日この頃です。
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言語関連の用語について

 表現された言語(本来の意味の言語)を単に言葉あるいは言語、ことば…のように表記しています。ソシュール的な意味の言語(言語規範ないし思考言語)はカッコつきで「言語」あるいは「言語langue」・「ラング」・「ことば」等と表記しています。(背景色つきで「言語」のように表記している場合もあります)

 一般的な意味の概念を単に概念と表記し、ソシュール的な意味の概念(語の意義としての概念、いわゆるシニフィエ・語概念)はカッコつきで「概念」と表記します。(2006年9月9日以降)

 また、ある時期からは存在形態の違いに応じて現実形態表象形態概念形態のように用語の背景色を変えて区別しています(この文章では〈知覚形態〉も〈表象形態〉に含めています)。

 ソシュールの規定した用語を再規定し、次のような日本語に置き換えて表記します。詳細は「ソシュール用語の再規定(1)」を参照。

【規範レベルにおける再規定】

・シニフィアン  → 語韻     (ある語音から抽出された音韻)

・シニフィエ   → 語概念(語義) (ある語によって表わされるべき概念)

・シーニュ・記号 → 語規範(語観念)(ある語についての規範認識)

・記号の体系   → 語彙規範   (語すべてについての規範認識)

・言語      → 言語規範   (言語表現に関するすべての規範認識)

語概念・語韻は 語概念⇔語韻語韻⇔語概念)という連合した形で語規範として認識されています。語規範はこのように2つの概念的認識が連合した規範認識です。ソシュールは「言語langue」を「諸記号」相互の規定関係と考えてこれを「記号の体系」あるいは「連合関係」と呼びますが、「記号の体系・連合関係」の実体は語彙規範であり、言語規範を構成している一つの規範認識です。規範認識は概念化された認識つまり〈概念形態〉の認識なのです。

なお、構造言語学・構造主義では「連合関係」は「範列関係(範例関係)」(「パラディグム」)といいかえられその意義も拡張されています。

 語・内語・言語・内言(内言語・思考言語) について、語規範および言語規範に媒介される連合を、三浦つとむの主張する関係意味論の立場からつぎのように規定・定義しています。詳細は『「内語」「内言・思考言語」の再規定』を参照。(2006年10月23日以降)

  : 語規範に媒介された 語音個別概念 という連合を背後にもった表現。

内語 : 語規範に媒介された 語音像⇔個別概念 という連合を背後にもった認識。

言語 : 言語規範に媒介された 言語音(語音の連鎖)⇔個別概念の相互連関 という連合を背後にもった表現。

内言 : 言語規範に媒介された 言語音像(語音像の連鎖)⇔個別概念の相互連関 という連合を背後にもった認識・思考過程。

内語内言は〈表象形態〉の認識です。

なお、上のように規定した 内言(内言語・内的言語・思考言語)、 内語とソシュール派のいうそれらとを区別するために、ソシュール派のそれらは「内言」(「内言語」・「内的言語」・「思考言語」)、「内語」のようにカッコつきで表記します。

また、ソシュールは「内言」つまり表現を前提としない思考過程における内言および内言が行われる領域をも「言語langue」と呼んでいるので、これも必要に応じてカッコつきで「内言」・「内言語」・「内的言語」・「思考言語」のように表記します(これらはすべて内言と規定されます)。さらに、ソシュールは「内語の連鎖」(「分節」された「内言」)を「言連鎖」あるいは「連辞」と呼んでいますが、まぎらわしいので「連辞」に統一します(「連辞」も内言です)。この観点から見た「言語langue」は「連辞関係」と呼ばれます。ソシュールは「内語」あるいは「言語単位」の意味はこの「連辞関係」によって生まれると考え、その意味を「価値」と呼びます。構造言語学では「言(話し言葉)」や「書(書き言葉)」における語の連鎖をも「連辞」と呼び、「連辞関係」を「シンタグム」と呼んでいます。詳細は「ソシュールの「言語」(1)~(4)」「ソシュール用語の再規定(1)~(4)」「ソシュール「言語学」とは何か(1)~(8)」を参照。

 さらに、ソシュールは内言における 語音像⇔個別概念 という形態の連合も「シーニュ・記号」と呼んでいるので、このレベルでの「シニフィアン」・「シニフィエ」についてもきちんと再規定する必要があります。

【内言レベルにおける再規定】

・シニフィアン  → 語音像(個別概念と語規範に媒介されて形成される語音の表象)

・シニフィエ   → 個別概念(知覚や再現表象から形成され、語規範の媒介によって語音像と連合した個別概念)

・シーニュ・記号 → 内語

・言語      → 内言

ソシュールがともに「シーニュ・記号」と呼んでいる2種類の連合 語韻⇔語概念語規範)と 語音像⇔個別概念内語)とは形態が異なっていますのできちんと区別して扱う必要があります。

 また、実際に表現された言語レベルにおいても、語音個別概念 という形態の連合が「シーニュ・記号」と呼ばれることもありますので、このレベルでの「シニフィアン」・「シニフィエ」についてもきちんと再規定する必要があります。

【言語(形象)レベルにおける再規定】

・シニフィアン  → 語音個別概念語規範に媒介されて実際に表現された語の音声。文字言語では文字の形象

・シニフィエ   → 表現された語の意味。個別概念を介して間接的にと結びついている(この個別概念語規範の媒介によってと連合している)

・シーニュ・記号 → (表現されたもの)

・言語      → 言語(表現されたもの)

 語音言語音語音像言語音像語韻についての詳細は「言語音・言語音像・音韻についての覚書」を、内言内語については「ソシュール用語の再規定(4)――思考・内言」を参照して下さい。また、書き言葉や点字・手話についても言語規範が存在し、それらについても各レベルにおける考察が必要ですが、ここでは触れることができません。

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プロフィール

シカゴ・ブルース

シカゴ・ブルース (ID:okrchicagob)

1948年生れ(69歳♂)。国語と理科が好き。ことばについては子供のころからずっと関心を抱いていました。20代半ばに三浦つとむの書に出会って以来言語過程説の立場からことばについて考え続けています。現在は39年間続けた自営(学習塾)の仕事を辞め個人的に依頼されたことだけをこなす日々です。

コメント等では略称の シカゴ を使うこともあります。

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意識と言語(こころとことば)

われわれは人間が『意識』をももっていることをみいだす。しかし『精神』は物質に『つかれて』いるという呪いをもともとおわされており、このばあいに物質は言語の形であらわれる。言語は意識とおなじようにふるい――言語は実践的な意識、他の人間にとっても存在し、したがってまた私自身にとってもはじめて存在する現実的な意識である。そして言語は意識とおなじように他の人間との交通の欲望、その必要からはじめて発生する。したがって意識ははじめからすでにひとつの社会的な産物であり、そして一般に人間が存在するかぎりそうであるほかはない。(マルクス・エンゲルス『ドイツ・イデオロギー』古在由重訳・岩波文庫)


ことばは、人間が心で思っていることをほかの人間に伝えるために使われています。ですから人間の心のありかたについて理解するならばことばのこともわかってきますし、またことばのありかたを理解するときにその場合の人間の心のこまかい動きもわかってきます。
このように、人間の心についての研究とことばについての研究とは密接な関係を持っていて、二つの研究はたがいに助け合いながらすすんでいくことになります。一方なしに他方だけが発展できるわけではありません。
…こうして考えていくと、これまでは神秘的にさえ思われたことばのありかたもまったく合理的だということがおわかりになるでしょう。(三浦つとむ『こころとことば』季節社他)


参考 『認識と言語の理論 I』を読む 1(1)――認識論と言語学三浦つとむ『認識と言語の理論 I』

子どもたちに向けた言葉

ふしぎだと思うこと
  これが科学の芽です
よく観察してたしかめ
そして考えること
  これが科学の茎です
そうして最後になぞがとける
  これが科学の花です
        朝永振一郎

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