乳酸菌を培養する(25)――〔基礎編2〕七分づき米のとぎ汁培養液(PC版ページへ)

2014年03月30日00:55  科学・教育>発酵

最終更新日 2015年10月2日〕

ここ2か月余り、私は2012年産の玄米を自家用精米器で七分づきにした米を炊いて食べています。したがって、とぎ汁培養もこの七分づき米のとぎ汁を使ったものになります。七分づき米のとぎ汁培養も精白米のとぎ汁培養も基本的には変わるところはほとんどありませんが、精米した後、米粒の表面に残る成分が微妙に違うため培養の過程やできあがった乳酸菌液にはやはり違いが見られます。

七分づき米の特徴

玄米は大雑把にいうと外側から果皮・種皮・糊粉層(こふんそう)の三つの層(ぬか層)とその内側にある胚乳、およびぬか層を突き抜けて胚乳の一部に入り込んでいる胚芽の各部分からなります。白米(精白米)では外側のぬか層と胚芽を削り取ってしまいます。果皮・種皮・糊粉層と胚芽が米ぬかとして取り去られるわけです。なお精白米の表面には糊粉層の一部が残っていますし、胚芽のかけらが付着していることもあります。これに対して七分づき米では糊粉層の大部分と胚芽の一部が残ります。――〔参考〕「分かるということ(米の構造と玄米の成分)

胚乳の大部分を占めているのはデンプンですが外側に近い部分にはタンパク質が含まれています。糊粉層(アリューロン層)にはフィチンやタンパク質、脂質などの顆粒のほか、稲の出芽の際に働くデンプン分解酵素やタンパク質分解酵素、脂肪分解酵素も含まれています。また胚芽には脂質・フィチン・ビタミンB1,B2・GABAなどのほか乳酸菌の増殖を促進するマンガンイオンも含まれています。なおフィチンはフィチン酸(イノシトール-6-リン酸:IP-6)にマグネシウムやカルシウムなどの金属イオンがキレート結合した化合物であり植物の出芽時に必要となるカリウム・マグネシウムやリンなどのミネラルを含んでいます。ちょっとまぎらわしいですがフィチンも「IP-6」と略記されることがあります ――イノシトールとIP-6(イノシトール-6-リン酸)とは

というわけで七分づき米のとぎ汁には白米とぎ汁に比べると栄養分が多いだけでなくデンプンやタンパク質などを分解する酵素もたくさん含まれており、胚芽のかけらも多めです。したがって白米とぎ汁培養液に比べて七分づき米のとぎ汁培養液では乳酸菌が増殖しやすいのではないかと予想できます。

〔メモ〕フィチン酸有害説について
米(玄米)や大豆など、穀類や豆類の種皮や胚芽などに含まれるフィチン酸は有害であるという説については、そもそも玄米に含まれているのは「フィチン酸」ではなく「フィチン」であるという基本的な事実さえ踏まえていない臆説ですけっきょく“玄米”は、安全なの? 危険なの? “フィチン”の効果についてまとめます№1:玄米が危険って本当!?。したがって「フィチン酸有害説」なるものについて心配する必要はありません。

フィチンは植物の種子(穀類・豆類・ナッツなど)が発芽するための栄養分としてミネラル類(カルシウム・マグネシウム・カリウムなど)を貯えた物質であり、発芽するときにフィチンはフィチン酸(イノシトール6リン酸)とミネラルに分解され、フィチン酸はさらに酵素(フィターゼ)の働きでイノシトールリン酸に分解されます。つまり、玄米や大豆を水に浸すと乳酸菌が作った乳酸のために浸漬水が微酸性になるためフィチンのうちある程度のものがフィチン酸とミネラルに分解され、さらに酵素の働きでフィチン酸がイノシトールとリン酸に分解されるわけです。ミネラルやリン酸などは植物の発芽や成長に必要な栄養分ですが、浸漬水の中では乳酸菌や酵母の細胞を作るための材料としても使われます。また玄米のデンプンのうち水に溶け出したものはデンプン分解酵素によって最終的にはブドウ糖になりこれが植物や乳酸菌・酵母の発育・成長のための栄養源・エネルギー源になります。

食品中のフィチン含有率なお、フィチンはほとんどの植物の種に含まれる成分であり玄米にも含まれていますが、右のグラフからも分かるようにごまや大豆・ピーナッツ・インゲン豆・ココア・小麦等に比べても玄米に含まれるフィチンは少ないことが分かっています№2:フィチン酸は、自然界に存在しない――画像をクリックすると別窓で原寸表示されます。

発芽玄米を販売しているあるネットショップが情報発信源となって玄米フィチン酸有害説がネット上に広まっていることを考えるとその裏にある商魂が透けて見えます。

2015年10月2日 追記〕「微生物自然農法」で作った玄米の通販をしている『玄米のマイセン』という店のホームページに「フィチン酸」や「アブシンジン酸」についておもしろい記事が載っていました現代食養生 Vol.20。玄米に含まれているのは「フィチン酸」ではなく「フィチン」ですが、そのあたりのことは置いておいてもなかなか説得力のある内容です。なお、この店で販売している米は残留農薬ゼロのものだそうです。

七分づき米のとぎ汁培養

これまでに作った七分づき米のとぎ汁乳酸菌液は 500mlのペットボトル約30本分(約15リットル)です。それぞればらつきがありますが以下では平均してどんな風に推移していくかをまとめました。

1回に作る培養液は七分づき米1合分のとぎ汁約500mlで、使うあら塩は小さじ約2分の1杯(約2g)、黒糖は大さじ約1杯(約13g)と少なめにしました。

初日:1合分のとぎ汁約500mlと小さじ約2分の1杯のあら塩とを500mlのペットボトルに入れます。ボトルをよく振って混ぜてからホットマット(弱・表面温度約32℃)の上に寝かせてカバーを掛けます。

1日後:通常のとぎ汁に比べると多めの泡が昇ってきています。消えにくい小さめの泡と一緒にやや褐色がかった米ぬか成分が上の方に集まっています。蓋を外すと吹き出してしまいそうになるボトルもありました。pH は 5.5弱~4.5強。5.0程度のものが一番多い感じです。乳酸菌密度はかなり高いです。

2日後:泡の量はやや減って浮遊物もさほどありませんが蓋を開けるとプシュッと音がします。よく見ると下の方から泡が上がって来ているのが分かります。

3日後:発泡量が増えています。浮遊物も見られます。乳酸菌がかなり増えているようです。ほとんどのものが pH4.5 程度を示しました。よく振って培養液に溶け込んでいる二酸化炭素を逃がしてから大さじ約1杯(約13g)の黒糖を入れます(黒糖を入れるのは2日後でもかまいません)。ボトルを振ってよく混ぜてから再びホットマットの上に寝かせてカバーをします。

4日後:発泡量は多め。大抵のものが pH3.5強を示しましたが中には 3.5に到達したものもありました。

5日後:発泡はやや激しくなり、蓋をゆるめるときには注意が必要です。pH 3.5 に到達。濃いとぎ汁の時よりも乳酸菌の数は多いようです。酵母はちらほらと観察できる程度に増えています。

6~7日後:かなり激しく発泡しています。乳酸菌の密度もかなりのものです。

8~12日後:発泡が少し落ち着いてきました。乳酸菌も多めですが酵母の数もかなり増えました。楕円形のものが多いですが短桿形のものも目立つようになりました。

13~15日後:二度目の激しい発泡です。発泡量はこちらの方が多く、蓋を開けてすぐに閉めるようにしないと中身が噴出してしまうほどの勢いです。短桿形の酵母が増えてコロニーを形成しています。pH は 3.5弱。ホットマットの上から床の上に移します。数日で発泡が落ち着き、乳酸菌液として使える状態になります。

というわけで七分づき米のとぎ汁培養では、玄米浸漬培養や白米浸漬培養ほどではないにせよ、かなり乳酸菌密度の高い乳酸菌液が得られることが分かりました。

pH試験紙/乳酸菌液の利用・活用・効能等について

〔注記〕pH試験紙については「〔基礎編〕米乳酸菌を培養してみた」の「pH試験紙・培養液の色(10円硬貨の利用)」をご覧下さい。pH試験紙が手元にない場合の簡易判定に10円硬貨を利用する方法についても記してあります。

〔注記〕乳酸菌の培養に用いて使い終わった使ったペットボトルの汚れは水で洗うだけで十分ですがボトル内部の肩口の辺りに付着している浮遊物や産膜などはブラシで落とせます。なお、「〔基礎編〕米乳酸菌を培養してみた」の「培養液の濾過・沈殿培養液・ボトル等の洗浄」でご紹介している「フルフルボトル洗い」を使うと手間がかからず簡単にペットボトルの洗浄ができます。

〔注記〕 米のとぎ汁や米ぬか水等を利用した米乳酸菌の培養に関する基本的な事項や知っておくべき大切な情報は <乳酸菌を培養する(1)――〔基礎編〕> に載せてあります。まだお読みでない場合は一通り目を通しておかれることをお勧めします。また、その記事には 乳酸菌液の利用・活用・効能関連記事へのリンク集 も載せてあります。

なお、日々の実践を通して新たに分かったことや新しい知見、あるいは誤っていた記述など、<乳酸菌を培養する(1)>の内容は頻繁に更新・追加されていますのでときどき目を通して頂ければ幸いです。

――乳酸菌を培養する――

   (1)〔基礎編〕  米乳酸菌を培養してみた
   (2)〔応用編1〕米ぬか培養液・拡大培養
   (3)〔応用編2〕乳酸菌液で作る豆乳ヨーグルト
   (4)〔応用編3〕通販の米ぬかを使ってみる
   (5)〔応用編4〕飯山氏、拡大培養の「秘法」を明かす
   (6)〔応用編5〕発泡乳酸菌液と乳酸菌風呂
   (7)〔応用編6〕乳清で作る豆乳ヨーグルト
   (8)〔応用編7〕乳酸菌風呂、その2
   (9)〔探究編1〕古米の玄米と米乳酸菌、玄米浸潤液
 (10)〔探究編2〕玄米浸潤培養液
 (11)〔探究編3〕黒糖と白糖、乳酸菌風呂3
 (12)〔探究編4〕米ぬかと糖だけを使った培養実験
 (13)〔展開編1〕玄米で作る豆乳ヨーグルト
 (14)〔展開編2〕とぎ汁で作る豆乳ヨーグルト
 (15)〔展開編3〕日本茶で作る豆乳ヨーグルト
 (16)〔展開編4〕豆乳だけでヨーグルトができた
 (17)〔展開編5〕植物系で作る豆乳ヨーグルト ―― 野菜・果実・穀物・蜂蜜・梅干…等で作るヨーグルトのまとめ
 (18)〔探究編5〕米乳酸菌は120℃に耐えるか
 (19)〔発展編1〕驚異の玄米浸漬培養液
 (20)〔探究編6〕炊いたご飯と乳酸菌
 (21)〔展開編6〕超大雑把な蓬乳酸菌の培養
 (22)〔発展編2〕玄米豆乳乳酸菌液で作る豆乳ヨーグルト
 (23)〔発展編3〕濃いとぎ汁と乳酸菌の増殖率
 (24)〔探究編7〕白米浸漬培養液も乳酸菌が多い
 (25)〔基礎編2〕七分づき米のとぎ汁培養液
 (26)〔発展編4〕米麹の力(米と麹だけで作れる濃密な乳酸菌液)
 (27)〔発展編5〕黒糖と米麹の併用/米麹と産膜性酢酸菌
 (28)〔展開編7〕手軽にできる蓬乳酸菌の培養
 (29)〔展開編8〕色がきれいな赤紫蘇乳酸菌液
 (30)〔展開編9〕ミカンの皮の乳酸菌液

 乳酸菌を培養する(1)~(30)をまとめて読む。

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