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自己の二重化(4)――認識の発展 [PC版ページへ]
2005/01/25 06:09

 自己の二重化(1)――独り言と自己分裂

 自己の二重化(2)――鏡と自己分裂

 自己の二重化(3)――観念的自己分裂

 自己の二重化(4)――認識の発展

 自己の二重化(5)――認識の外化・対象化

 自己の二重化(6)――鏡としての表現

 自己の二重化(7)――他者を鏡とするということ

 自己の二重化(1)〜(7)をまとめて読む。

 関連:二つの主観(1)〜(3)

 関連:対象意識(1)〜(5)

〔2005.01.21記/2005.01.30追記〕

三浦つとむはその著書の中で、鏡像を媒介とする観念的自己分裂についてとりあげ、鏡以外にも鏡と同じような働きをするものがあるということを指摘しています。鏡と同じような働きをするものには、虫めがねや望遠鏡、顕微鏡などのほか各種のメーターやオシロスコープ、テスターなどの計測器をはじめレントゲンやCTスキャナー、MRIなどの医療用機器などがあります。


これらの検出装置や計測器に共通するのは、時間的・空間的に現実の人間の感覚では知覚できない対象を知覚可能な形態に変換し、それによって人間の感覚の限界を広げ、さまざまな対象についての認識を深めることを可能にしてくれるものであるということです。

感覚的にとらえられる物質的な対象の場合、このような物質的な鏡を利用して拡大された像や、針の振れ・波形・解析画像などの知覚可能な形態に変換された像を媒介にして観念的な自己分裂を行なうことによって人間は認識の限界を拡張してきました。

そして、「人間はまず、他の人間という鏡に自分を映して見る。人間たるペーテルは、自分と同等なるものとしての人間たるパウルに関連することによって、初めて、人間と しての自分自身に関連する。だがそれによって、ペーテルにとっては、パウル全体がまた、彼のパウル然たる肉体のままで、人間種族の現象形態としての意義をもつのである」というマルクスの言葉は、自分以外の他の人間のあり方を媒介にして、観念的に自己分裂した自己が他人のあり方を自己の姿とし てとらえるところに「我」という認識が成立し、またそれを契機として他の人間と物質的・精神的に全的に関わることによって、人間は種としての人間の生活を成立させているということを示唆しているのでしょう。他者の姿を媒介にして、つまり他者を鏡として人間である自己に対する認識を深めていくのが人間の人間たる所以なのですね。

鏡についてのマルクスおよび三浦つとむの文章は、物質的な鏡による映像と精神的な鏡(認識)による模像との矛盾が観念的自己分裂を媒介し、それによって両者が相互浸透し合いながら統一され認識が発展するということを述べたものであると私は受け止めています。

〔2005.01.30追記

人間は意識における如く単に理知的に自分自身を二重化するばかりでなく、行動的にも、現実的にも自分自身を二重化する。従って、自分が作った世界のほかで自分自身をみる。(『経済学・哲学草稿』)

上は「自己の二重化(3)――観念的自己分裂」の最後に引用したマルクスの言葉です。このうち「人間は意識における如く単に理知的に自分自身を二重化する」の部分は精神における二重化つまり観念的自己分裂のことをいっています。「自分が作った世界」とは自己の意識内部の観念的な世界のことであり、そこで観念的に二重化し、<観念的に分裂した自己(主体)>が<観念的に対象化した自分自身>を見るということです。これが「意識にお」いて「理知的に自分自身を二重化する」の意味です。

三浦つとむはこの特殊な過程から弁証法(対立物の統一=矛盾の解決)の一般法則「否定の否定」を抽出します。現実の自己の立場のままでは現実の自己を認識することができないという矛盾を解決するために、人間は現実の自己を一旦否定して<観念的な自己の立場>に移行し(否定)、そこで<観念的に対象化した自己>を見る。そしてそこで得た自己についての新たな認識を携えて再び現実の自己に復帰する(否定の否定)というわけです。人間はこのように「否定の否定」という弁証法の論理に従って自己の認識を発展させているのだと三浦は指摘しているのです。

「行動的にも、現実的にも自分自身を二重化する。従って、自分が作った世界のほかで自分自身をみる」については次項(自己の二重化(5)――認識の外化・対象化)で書こうと思います。

(関連記事)

自己の二重化(3)――観念的自己分裂
自己の二重化(5)――認識の外化・対象化
長谷川宏訳『経済学・哲学草稿』――「解説」〈疎外・外化・弁証法〉
城塚登・田中吉六訳『経済学・哲学草稿』――「訳者解説」ほか



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